即音乱調

風是(風邪)を早く治さないようにしていると本当に長くかかります。それだけ身体(私)が大きく変わろうとしているのでしょう。夕方まで調子が悪く、夜になると少しましになります。そんな日々ですが、リハーサルの前後に何の拍子かタルコフスキーを観ています。

演奏活動を始めて初期のころ、ライブを聴きに来られた方が、急に話しかけてきて「あなたはタルコフスキーをこの順序で観なさい」と言ってタルコフスキーの全ヴィデオを貸してくれました。当時映画のヴィデオはずいぶん高い時代。追われるように仕事をしていた当時の私には、今はわからないが、何かとても大事なものがあるにちがいないという感覚を残し、将来きっと観るべき時が来るだろうと思ってざーっと観たまま、随分ご無沙汰をしていました。

寒い寒い東京、長い風是気味、ガザでは殺戮が繰り返され、日本でもイヤな事件ばかり、私自身の将来の仕事もどうなるかわからないという今、タルコフスキーには、とてもグッと来るものがありました。観なさいと言って貸してくださった方の気持ちがやっとズーンとわかった気がしたわけです。

遺作「サクリファイス」で使われている音源の一つが海童道宗祖であることは有名です。取り出して「即音乱調」をじっくり聴きました。堺の僧侶・磯部宗寛氏が苦労して集められた貴重なLP四枚、および復刻CD三枚、当分タルコフスキーと共にこれらの音源を身に受ける日々になりそうです。

先日、「即興」の話を聞きたいと、現代音楽と邦楽の二人の奏者が拙宅にきました。その時も「では、日本の伝統の中の即興ってどんなもの?」と言う話題の時に海童道が話題になったばかりでした。

即音乱調のライナーノートで、現在世界で大事な三人の音楽家として、ピート・シーガー、ジョン・ケージと共に海童道を上げていた小泉文夫さんの目の付け所はとてもユニークです。ちなみに「一つの音に世界を聴く」(晶文社)という武満徹の対談集には武満、ケージ、海童道の鼎談が載っていますが、三人の求めるものの違いが人間そのものの違いと共によく見えるものになっています。

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