由布院で才津原哲弘さんにこの本をいただいてきました。「地域に図書館はありますか?」身近に図書館がほしい福岡市民の会・編 石風社 1200円+税。能登川図書館長としてずっと活動をされてきた方です。この春の七つのピアソラツアーでは博多と彦根の公演に来てくださり、知己を得ました。博多ではご自身の出身校・西南学園での公演で、しかも、その日に同窓会が同じ敷地であったのに、コンサートに来てくださいました。
年間3万人も自殺者のでる日本で、「図書館が隠れ場所になる」「図書館は心を癒すところ」というコトバが印象的でした。まるでかつての日本のお寺の役目のようです。「アジール」という網野さん受け売りの用語も思い出します。
ミッシェル・ドネダと作ったCD「SPRING ROAD ’01」にはブロアというフランスの街の図書館でのライブが収録されています。所謂サバーブス(郊外)にあるこの街は本当に荒れていました。様々な民族の不満があふれていました。アパートの一室からは煙が立ちもぼっているし、頻繁に巡回しているパトロール車は鉄の網で覆われ、しかもガラスにはヒビが入っています。ミッシェルの車は純然たる中古車ですが、路駐は危ないということで図書館のシャッターの中に入れました。外でお金を数えたりしてはダメだよ、とかいろいろ注意されました。
大変な所へ来たな~と思いました。それにしても何でこんな荒れたところに図書館なの?と聞くと、「こういうところだからこそ、図書館が必要なんだ!」という確信に満ちた答えに圧倒され、自分の認識不足を恥じました。館内に入るとアラブ系・アフリカ系の子供達が楽しそうに走り回って遊んでいました。本当にアジールのようでした。
この子供達と遊んで、という依頼でミッシェルと子供達とで新聞紙をビリビリ破る音を楽しむパフォーマンスをしました。improjazz(http://pagesperso-orange.fr/improjazz/) というミニコミ誌がこの街で作られていて、即興演奏を応援しています。この子供達と一緒に既存の童謡を歌うのでもなく、有名なポップスを歌うのでもなく、東洋のベーシストと一緒に新聞を破って遊ぶ。面白い企画をするものですね。その日に泊めてもらった家では、カラスを飼っていました。不思議な想い出です。
CDに収められたこの曲に対する返礼として、ミッシェルとの日本ツアーでも博多の画廊で、刷り間違えたチラシをみんなで破りました。(それもCDRに収めました。)インプロは「疑問・質問」を喚起する行為であり得ます。
図書館について、もっと身近に考えてみようと思った次第です。