何でフランス人のバンドネオンなんかと演奏するのよ?と良く聞かれました。日本人のお気軽な「本物志向」でしょうか。ジャズなら黒人、クラシックはユダヤ人かロシア人、フラメンコはスペイン人・・・と続くのでしょう。タンゴバンドネオンならアルゼンチン人でしょう、という発想。日本には多くのクラシック音楽家、ジャズミュージシャン、シャンソン歌手、フラメンコダンサーがいます。ベルリンフィルのコンサートマスターに日本人がなったり、小澤征爾さんがウイーンフィルを振ってニューイヤーコンサートをしたり、イチローがプロ野球の世界記録を作ったり。(小澤征爾さんの名前が、板垣征四郎+石原完爾というのはホントなの?)
一方、器楽の技術としては普通の日本人奏者より進んでいる尺八奏者の西洋人がいたり、演歌を歌う黒人が話題になったりしています。演歌は日本の心なのでしょうか?在日韓国・朝鮮人の演歌歌手は多いし(カミングアウトしている人もいない人も)、韓国にも演歌はあります。邦楽器・雅楽器もユーラシア(ユーロ・アジア)を遠く旅をしてたどり着いているものばかりです。純粋に日本産の楽器は「大正琴」だそうです。
生物の原理としても純粋種より雑種が強い。純粋種は天敵が現れると全滅してしまう。生き延びることが(DNA を伝えること、適者生存、弱肉強食)原理かと思うと、そうでもないらしい。このあたりが面白いところです。自分はこうだ!ここだけは譲れない!これが私の個性、といくら主張しても全く関係ないところに個人は存在しているようです。(個人を最終的に決定するのは免疫システムと言う話を聞いたことがあります。)
またまた一方、スポーツ界で、陸上短距離は黒人、女子マラソンやフィギアスケートはアジア系が強いというのは生物・民族的な結果でしょうか?足の長い西洋人の暗黒舞踏は何か変ですが、それは西洋楽器をやっているアジア人は何か変に見えているであろう、ことと鏡になっています。22年前ブエノス・アイレスに行ったとき、地球の裏側からプグリエーセを真似る楽団が来た!と話題になったのです。
この極東の島国でなぜコントラバスを弾いて生きているのか?というところから私の音楽人生が始まりました。あえて危険なところに足を踏み入れて試行錯誤をするという綱渡り人生です。「今・ここ・私」が、なぜピアソラなの?タンゴなの?この人達と一緒なの?という答えのヒントが見つけたいものです。
即興演奏のCD をスイス人・アメリカ人と作ったとき「Voyaging Antipodes 旅する対蹠点」とサブタイトルを付けました。(自分が今居る場所の地球の反対側の地点を対蹠点といいます。)ドイツの田舎の教会でオルガン代わりで使われたバンドネオンが船に乗ってブエノス・アイレスに着き、アフリカ・南米のリズムを得て、タンゴをはぐくみ、逆輸入でフランスに渡り、それを手にして自分の生涯の伴侶として生きているオリヴィエ・マヌーリさん、地球を半周して明日早朝成田に降り立ちます。