金沢芸術村でのピアソラ特集で、ボルヘスの詩の朗読との演奏と「エスタモス・アキ」のゲストで(ゲストと言っても全曲参加)をしてきました。久しぶりのタンゴ三昧でタンゴにあたって風邪を引きました。
信じるというか、取り憑かれるかというか、芸術村のプロデューサー工藤さん、ヴァイオリンの古橋ユキさん、バンドネオンの田辺義博さん、はタンゴの世界に生きていました。工藤さんはまさにピアソライズムの極み。「~イズム」というのは「~中毒」と訳すとニュアンスが伝わる、と言う話を聞きましたが、まさにそれ。世界屈指のピアソライズムの斎藤充正さんと共に世界二大ピアソラマニア巨頭でしょうか。プロデューサーとして、アンサンブル金沢に全曲ピアソラの演奏をさせたり、活け花、ボルヘス、バレーとピアソラを組み合わせたり、チェンバロでピアソラをやらせたり、様々な製作をしています。
「しばらくブエノスアイレスの空気を吸わないとおかしくなるよね」「そうだそうだ」「あの裏町の通りの変な格好のおばあさん知ってる?」「もちろん、写真も撮った、お金を要求されたけどね」「じゃ、未明にサンバを踊るおかまちゃんは?」「あの人は世に知らせたくないよね」「ピアソラのお墓に毎回行くんだ。」「でもオラシオ・フェレールはピアソラのお墓がどこにあるか知らないんだぜ。」等という会話が飛び交っています。ハ~。
これほどのめり込むことは「幸せ」でしょう。前世に何か関連があったとしか思えません。かくいう私も21年前ブエノスアイレスに行った後タンゴ・ピアソラ・プグリエーセにドップリ浸かったことがありました。しかし一年保たなかった。ピアソラばかりやるグループを作って録音したときも、「今、私は何をやっているのだ?」という気持ちを抑えることができませんでした。もともと「私って誰」という動機で音楽を始めたので、あるジャンルの音楽だけをやっていたり、誰かが書いた音楽だけをやっていると、言うに言われぬ穴を感じてしまう。
仕方ないですね。花はそれぞれの願いがあって咲く、と言う言葉を思い出しました。