alaska便り10

本日の公演は大入り。主催も出演者もひとまず安心する。熱心に聴いてくれているのがわかるのでなおさらうれしい。結局、わかる人のために演奏すると成り立つ世界なのだろう。私も日常的にその問題を抱えている。何とかそこから一歩でも踏み出したいと思って、いろいろな努力工夫をしているのだが、なかなかうまくいかない。

ほかのジャンルの人とやること、演劇的にやること、歌の世界に近づくこと、創意工夫を怠らずにやっていけば何か答えはくるのか、、、、。昨日の反省から私は弦をガットに張り替えた。スティールだと効果的だが、やはり実感が伴わず、自分との距離が遠いのだ。人工ハーモニックスなど危険な箇所はあるが、実感を重視。なにより音質は数段上だ。

弦を張り替えていたら、ドミトリスが話しかけてきた。驚いたのは彼はこう見えてまだ41歳。少なくとも私より上だとばかり思っていた。何がそうさせるのだろう。悲しみと苦労を背負ってきた顔、日なたを嫌い日陰でタバコを吸い、自分で入れた濃いコーヒーを飲む。今回は二人のヨーロッパ人、彼と指揮者のエマーソンが同じ髪の毛の抜け方。

一説によると、この禿げ方はペストに対する優性遺伝子らしい。グリーンカードを持ち、シカゴにも家があり、ギリシャでは、イタリアとギリシャの間の島に新しい家を建てたばかりだという。50メートル先が海岸、ガラス張りの部屋を自慢していた。こういう話の時はにこやかになる。

生まれ年のはなしから、星座の話になり、シュトックハウゼンの曲の話になる。星座で分けた12の曲集だ。彼が思いつく「そうだ、これを最後のジョイントソロリサイタルの時にやろう」ということになり、リハを始める。ちゃんと譜面を持ってきている。彼がvirgo私がscorpionだ。水瓶のメロディもやることになる。インプロ部分も多く含める構成にした。こういう時間は楽しい。

これからホーマーという町に5時間かけて移動。芸術家の多く住む美しい町だという。そこでアンサンブルの最終回、翌日ジョイントソロリサイタル。それで終わり。翌朝は6時の飛行機でアンカレッジを発つことになっている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です