2006.03.02 Thursday

曲目解説 その4

トラック6:シクロ
鈴木絢二さん率いる劇団TAOのギリシャ悲劇「ダナイード」の中の一曲。大勢の妊婦が輪舞するという不思議なシーン用に作曲しました。フランスのミュゼットやアルゼンチンフォルクローレのイメージの曲です。公演の時は小鼓に久田舜一郎さん、ピアノに黒田京子さんが参加してくれました。久田さんの声がもの凄く、役者が吹っ飛んでしまったことを思い出します。

トラック7:オンバクヒタム糸編3 
京都造形芸術大学での高田和子三味線コンサートシリーズ最終回「帰ってきた糸」公演の委嘱でグループ「糸」の為に作曲した組曲の中の一つです。気がつくと大成節子さん(湯河原在住の画家)のある書画作品(写真↑)とイメージが重なったために節子さんの詩を声がよく響く井野さんに朗読してもらいました。また、このトラックのみ多重録音しています。この詩の他のバージョンでは、「ウッドベースを弾いているような原初の音が響いてくる、低く、ときに激しく」という詩句さえあります。

冒頭の鯨の鳴き声のような音は、テールピース(緒止め)を直接弓弾きした音です。「箏の一番いい音は?」という質問に沢井一恵さんは「立てかけた箏に風が通り抜けたときの音」と答えました。それに相当するコントラバスの音を工夫したら「鯨」になってしまったという次第です。最近「らくだの涙」という映画を観ました。場所はモンゴル。難産だったためか子供のめんどうを拒否してしまったらくだに馬頭琴と歌を聴かせる儀式を行います。親は涙を流し、親子の情愛がもどるという話です。私が注目したのは馬頭琴を弾く前に、楽器をらくだのこぶに引っかけるシーンです。そうすると風が通り抜け馬頭琴がかすかに鳴っていました。その音でらくだの身体のチューニングをしているように見えました。そうすると演奏や歌を充分に受け入れられるという感じでした。作為のない音ということでしょうか。箏は竜になぞらえます。竜、鯨、らくだ、馬、みんな動物ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です