横浜国際何でも音楽祭その3

年に1回の旧友・ロジャーターナーさんとのセッションはとても楽しみです。多少キビシイ体調でも音楽療法+人生療法として必須。当日ミッシェル・ドネダからOld friend Roger Tによろしくとのメール。

年長組になった私たちの結束は固くなります。パートナーがサバイバーのロジャーさんは事の他、私のことを気遣ってくれます。私にとって大事な、数少ない「アニキ」。

初めて帽子無しで演奏したのですが、齊藤聡さんのBlogの写真にみても、アブラキサンによる脱毛は顕著。後頭部は自分では見えないのでうかつにもさらしてしまいました。お見苦しいところをお見せしてスミマセン。

ライブハウスの良いところは、そのままストリートに繋がっている所だと思います。街の騒音、カラオケ店の音、焼き肉屋の匂い、パトカー・救急車の音が交ざります。ロジャーさんは今夜もバスドラムをセッティングしません。低音部は私に無言のうちに任されています。了解。

東急ハンズなどで仕入れた極細の菜箸や、細い金属棒も使い、円形にタムを高速で周回するのを特徴に「ストリート」の音を出しているように聴こえました。レ・クアン・ニンのような擦る音もふんだんに取り入れられています。

ストリートの音に耳を澄ませてご覧よ、いろいろ面白いぜ、と教えてくれているようです。

彼のハイスピードは時代のスピードと競っています。

エレクトリックものでは、ツマミを回したり、ペダルを踏んだり、コンピューターを動かすために時間が必要です。アコースティックではその手間を省くことができます。その、コンマ何秒こそが大事。アコースティックの方が「速い」のです。またエレクトリックでは微小でも暗騒音があり、それは耳に無意識の影響を与えます。音は大きく長くなり、効果を求めます。効果はほとんどがコピーなので、その分の時間が無駄(芸人のお馴染みのギャグに似ているかも)。それはそれで私の求めるものと違う役目があるのでしょう。

アコースティックの音は小さくなればなるほど、耳を澄ますので、ニュアンスや色合いや変化が顕著になり、ロジャーさんはそれを楽しんでいるようです。「美しかったよ、テツ、最近、いや一生の内でも最高の美しさだった」と眼を潤ませて話しかけてくれました。

最新の演奏こそ生涯最高の演奏でしょうし、私を励ますアニキの心意気なのかもしれませんが、それをそのまま美しい英語で言ってくれるのは感動的です。

「絶対またやるから。さもないと俺が罰を与えるからな。」というアニキの言葉を守ろうと思います。

最近では一番長く演奏しました。私の体内時計は、だいたい演奏時間をしっかり記録していくのですが、ロジャーさんとの演奏では毎回時間の感覚が無くなるのです。いつ始まったのか、いつ終わったのか、いや、始まっていないのか、終わっていないのか、分からなくなりストリートに放り出され、ショクブツやムシやドウブツ、ヒト相手に音を出して遊んでいるかの印象。

「少なく運ぶ、ちいさく運ぶんだぞ」というアニキの命令どおり、本日の使用楽器はフライオーレ雅でした。これだとエアジン階段も何とか1人で上げることができます。最近ECMで発売されたバール・フィリップスさんの最後の?ソロではフライオーレを使っています。そしてフライオーレ以外の楽器はすべて処分したとのこと。ビックリでした。私がフライオーレを求めにジャン・オーレさんの工房に行った時はバールさんも同行してくれました。彼の術後、初めての遠出だったと聞きます。このアニキにも頭が下がりっぱなし。

使用弓はナカタニ工房のテグス弓。ウィリアム・パーカーさんの最近の写真を見ると彼もナカタニボウのようです。ジョエルのツアー使用楽器もフライオーレ、彼女のが27番、私のが28番です。
繋がって繋がって、みんなが求めるものが近づいて行く!古い名器でないことに気がつきます。古い名器にはそれに適した環境で大事に演奏・鑑賞すれば良いのです。その音も必要です。

満員の客席には太田省吾さんの「水の駅」の少女役安藤朋子さんがいらっしゃり、かつて東向島の住友ベークライト工場跡1000坪でTAO「白鬚のリア」第1部で共演し、長期間の稽古・本番と毎晩「善兵衛」で呑み語り合ったころを思い出しました。私の青春だったかも。将来近いうちの共演(DUO)をお約束しました。楽しみだな〜。

湯治記念セール、昨日もたくさんご購入いただきました。共演者やスタッフ仲間には本来は物々交換が然るべきでしょうが、今回は購入いただいています。ひとつひとつが回復の力に変換されていきます。

セールは25日まで(LIVEでは27日まで、500円〜1000円引き)です。どうぞよろしゅう。
http://travessiart.com/music/