先日、半年ぶりにJRに乗りました。化学療法治療中は免疫力がかなり落ちているので人混みを避けること(インフルエンザ・ノロウイルスなどを警戒)を医者に言われ従っていました。さて、乗ってみると、今の首都圏を象徴するのでしょうか、急病人や人身事故が起こって電車は遅れ、いらついた人も多く、たいへん混んでいました。
ミッシェル・ニン・徹ツアーフライヤに広告を載せてくれた鶴屋弓弦堂(荻窪)と弦楽器の高崎(代々木)へ、刷り上がったフライヤを持っていったのです。
2人とも私と同年代。病気をしたり、良い時も悪いときも共有し、もはや同志とでも言えそうです。
高崎さんとは、後楽園にあった文京楽器時代からの知り合い。山本さんの独立に同行、新大久保で長年ていねいな仕事をしていました。日本の景気が良かったころです。そしてご自身の独立。その時、大変印象的だったのは、彼が山本さんで働いていた時の顧客への連絡を一切行わなかったことです。彼自身のお客さんもいたのに、連絡しなかったのです!なかなか出来ることではありません。我が家のそばだったので偶然見つけて行ってみると、お客さんも楽器もなくしょんぼりしていました。今や、楽器倉庫のように楽器もあり顧客も絶えません。
鶴屋弓弦堂の鶴田さんには現在使用中の2本のフレンチボウを手配してもらった(ヨーロッパのジプシー経由!)のを始め何かにつけてお世話になっています。ベースアンサンブル弦311を作ったときも田辺和弘・田嶋真佐雄さんを紹介してくれました。
また、彼が国際弦楽器フェアに出店していたときに隣のブースにいたオランダの楽器商から「未使用のガンベルがベルギーで発見され、今、自分の店にあるよ」という情報を聞きつけ教えてくれました。
ガンベル(Gand & Bernardel)。何年か前ヨーロッパツアーの際、バール・フィリップスさんにお借りして恋に落ちてしまった楽器です。全部で38本しか作らなかったというので、世界の市場に出てくることはほとんど無し。バールも譲ることは出来ないと言い、たとえ市場にでたとしても値段も相当ということで諦めていた楽器です。
いろいろな経緯があり(本になりますね。)そのガンベル(ジルベール)は今、バールのメイン楽器となり、バールの使っていたガンベル(バール)を今、私が使っているのです。鶴田さんは、そのきっかけをつくってくれた恩人です。
海外での国際ベースフェスなどに出ると、残念ながら日本のコントラバス界(奏者・教育者の意識、楽器店ー楽器製作者・楽器修理者)のレベルは余り高くありません。情報もまったく追いついていませんし、追いつきたいと思ってもいない様子です。意識の高い奏者は外国へ行ってしまうように見えます。
そんな事情の中で世界レベルに一番近い情報をもつのが鶴屋弓弦堂です。また、弓製作者を育て2人の女性が製作者となりました。素晴らしい弓を作っています。ロック経験の無い私にフランク・ザッパを教えてくれた恩人でもあります。全CDを貸してくれました。ハイ。
高崎さんの修理した楽器の本数はおそらく日本で一番多いでしょう。そこから蓄積した楽器情報は彼だけの宝物でしょう。そして奏者はその恩恵にあずかることができるのです。
また、阪神淡路大震災や東日本大震災で被災した楽器を無料で修理したり、北海道・沖縄などへ出張修理も手弁当でやっています。息子さんが独立して楽器店を出しました。子供が親と同じ仕事を選ぶというのはオヤジにとっては誇らしいことですよね。おめでとうございます!
2人とも音楽への愛情・コントラバスへの愛情は半端ないですが、本当は、それを越えた「人間」が好きなのだ、と思わざるを得ません。
また同年代ということもあって、何でも話すことが出来ます。これも貴重です。知り合いの奏者の話をするときも基本に愛情があるので、短所も欠点も、話せます。他の人が聞いたら悪口に聞こえるかもしれませんが、違うのです。音楽のため、コントラバスのため、日本のため、世界のためなのです。
本当に貴重な仲間です。
皆さまもコンバスを始めたいとか、楽器が欲しいとか、修理をしたいとかありましたら、連絡してみてください。