先達の教え

ワークショップに応援に来てくれていつも素晴らしい写真を撮ってくださるスズキイチロウさん。わざわざ筑波から電車に乗って来てくれるのですからその気持ちは痛いほど伝わります。キャンをサバイブして現在は4ヶ月おきに検査をするだけにまでなったそうで、演奏活動も完全に復活されています。バール・フィリップスさんと同じ患部、バールさんからいろいろな事情を聞いています。声・味覚・唾液などの症状もひとかたならず。

「いずるば」のオーナーは80歳。4年前に難度の高いと言われている部位の同病手術を成功させ、その後、竜太郎さんとヨーロッパに2回も行っています。入院中にお見舞いに行くと何やら計画を立てています。何?と聞くと、私の葬式の式次第!場所はどこそこ、誰に話してもらって、誰誰に演奏してもらっての順番まで決めていたのでした。驚きました。

お二人とも大変ヘビーな治療を克服なさった私にとってのアイドルです。

私は、ついつい甘えて、愚痴ったりしています。オレだって、結構ガンバっているんだけど、こんなに副作用がツライ、分かってくれるよね?労ってくれるよね、という甘えです。ハイ、スミマセン。

前回のWSの時、あまりにキビシイ副作用に「今回はキツくて、残り2回の治療の自信も無くなりそうなんですよ。」とイチロウさんに愚痴ってしまいました。

「何言っているんですか〜? 残り2回、やり逃げするのみ!です。やり逃げ、やり逃げ!」と諭すようにしかも真剣さを隠すように言ってくれました。ご自身は胃瘻もして覚悟の治療を克服、「西洋医学を舐めるんじゃないよ!」という名言も伝えてくれています。

ふと気がつきました。

同病あるいは重病を患ったことのある人は、「どんどん活動してください」とは言わないまでも、決して「身体第一ですよ。仕事は二の次、三の次」とは言わないのです。逆に、健康体の人ほど「大事にしてくださいよ」「仕事なんてどうでもいいから」と言ってくれる傾向にあります。不思議な符合です。

同病相憐れむ、ではないですが、同病の人達は(特にキャン)、同志意識に近いものがあり、今までの自分の生き方を反省しつつ、一緒に闘っている感じなのです。そんな我々にとって、健康に生き残ることよりは、この現状・事態で、どうやって生きていくかということに最大の関心があるのかもしれません。なんとか克服して、仕事に復帰するという事は、先の先の話なのです。

同様に、健康な人ほど「化学療法なんて毒なだけ、製薬会社の陰謀だから即やめなさい」と忠告してくれ、同病の人、重病の人は決してそう言いません。

memento mori、かつ、一期一会が身に染みていて、一瞬一瞬が愛おしく、大事なのです。嘘や体裁からは自ずと自由になっているのかも知れません。この貴重な体験を活かさなくっちゃ!

写真はもちろん スズキイチロウさん。