「いずるば」ワークショップ
かくも多くの人の興味を喚起し、参加していただいたり、一体なんでだろう?40年ずっとそういう活動をしていたはず・・・。何が違うの?
というと私の「事情」?
生きている人はすべて平等に「事情」があります。一瞬一瞬の情報が積み重なり、取捨選択をして進んでいます。決して停まりません。その偶然の選択が必然となり個人史を作り上げていきます。
みんなが平等にそれぞれの「事情」をもっているからこそ、「事情」についての話は、おおむねは、避けたいのですが、ある時、誰かの「事情」がなんとなく?ピックアップされ、そこに注目が集まったりするのでしょうか?
「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」を書いた東田直樹さんは、世界30ヶ国近い翻訳をされるきっかけになったロバート・ミッチェルさんに「あなたが自閉症であって、本当にありがとう。世界中何十万の自閉症の親・医師・関係者達にとって本当にありがたい本だったのです。」と言われ、本当に困惑してしまいました。現在、執筆者として身を立てたい彼にとっては自分が自閉症であることは触れて欲しくない、「自閉症の彼」というバイアスをかけて欲しくなかった訳ですが、いろいろと思うところもあったようでした。
今回のワークショップもちょっとそんな感じもします。(私の事情がピックアップされた?)
しか~し、
それでいいのだ!
私はウェルカムしたいと思います。なぜなら、そこにはすばらしいことが刻々と起こっているのです。それをとても愛おしく感じます。シェアできればなんとすばらしいことか・・
いろいろな人が集まってこそ、思いがけないことも起こります。そしてそれが「いずる」場として「いずるば」があります。そのきっかけになれたのならば「光栄」と言いたいのです。
例えば、第1部で「そもそも音とは何か?」という話をしました。白川静さんの漢字の語源から、胎内音・中国の度量衡・首狩族の合唱・無言唄・虚階・ケージ・荘子・絃上・キニャール・文楽(阿古屋琴責め)・台所の音・音と数・ノイズの意味・身体の調律などなどをトピックに音を聴いたり・映像を観たりしながら話を進めました。
ワークショップ参加者の中に、メインゲストとしてお呼びする予定の庄﨑隆志さんが手話通訳の方を同伴していらっしゃっていました。その彼が音についての話に大変同感した!と言ってくれました。音は音ではない。何が伝わるのか?伝わるって何?
同じ病気を克服した方が「私はいま、たまたま応援する側にまわることができたので今日は応援に来ました」と言って遠方より来ていただき、暖かな微笑みをくださり、この後すぐ透析にいかねばならぬ方も1時間延長した質疑応答に盛んに参加してくださいました。
ひとつの気づきが拡散して、個人の「事情」に反応し、曼荼羅になって、他者の「事情」と混ざっていきます。そしてそこから、「事情を越えたもの」に行くことが出来るのかもしれません。
正直言って、私の体調は良くありませんでした。目は開かないし、足は浮腫むし、ろれつが回らなくなったり、頭の回転が急停止したり・・・もう隠しようがありませんものね。しかしそれはひとつの「事情」でしかありません。
不調も病気も含めての「健康」「生活」を考え、「仕事」を考えるまたとないチャンスです。サポートしてくださる方も大勢いらっしゃいます。始まる前には野口体操の施術をしてくださいました。大いに甘えます。
出来ないときはなんとしても出来ないのです。出来るときはただやるのです。
実践参加希望者が多くて数名お断りをしました。即興実践参加者をこのワークショップのメインの対象にするのか、私が一対一でやらなくても良いのか?という大きな問題がでてきたようです。スタッフと一緒に善処して行こうと思います。今回私は40分弾き続けました。
実践後の「ふりかえり」の時間は多くの意見がでてきてとても興味深かった~。聴衆はそういう風に聴いているのか~、やったご本人はそういうつもりだったのか~、とか・・・。ここからこそ直接、分かりやすい形で、次の話に進めるな~と思いました。これこそ、ほっかほかの「いま・ここ・わたし」です。
今回は矢萩竜太郎(ダンス)・富士栄 秀也(ボイス)・佐草夏美(ダンス) 大森浩幸(ダンス)・SHEZOO(キーボード)・落合康介(ベース) マックイーン深山(箏)荒井皆子(ボイス)さんが参加。私との一対一のデュオを中心に進めました。
みなさん表現活動をし続けている方だったので、場の流れに沿ってすばらしい演技をしてくださいました。時間の流れも大事な要素ですし、順番も大きく影響します。また、第1部、第2部で話したことも影響していると思います。(願います。)
今回のように活動を続けている人達に、そして演奏家に実践が偏ってしまう問題も起こるかも、とスタッフミーティングで話題に載りました。そうで無い人達が「やりにくくなる」わけです。回を重ねることによって、良い様に進むことを心より願います。
ともあれ、無事に出航できました。みなさまありがとうございました!