庄﨑さんとの4舞台が終わりました。一つ一つ終わっていきます。
ヒーヒー言いながら、渋滞の愚痴を言ったり、高速道路や駐車場のバカ高さに呆れたり、暑いの寒いの言ったり、多くのことをこなしている時は、そのこと自体の遂行で単純な充実感があり、1つ終わり帰宅する度にホッと胸をなで下ろします。同時に、一つ一つ減っていくと、なんとも言えない寂しさも少しずつ出てきました。
ともかく、本番はあと一つ残すのみ。
「私は私の身体に戻り幕のたもとであなたと眠る ありがとうキッドアイラックホール」
二十数年前から使わせていただき、東京での公演のリファレンスとして敬愛していたキッドが今年で閉まるということです。キッドの幕は下りますが、幻の幕のたもとで寝ていて起こされるのを待っていようと思います。
多くの偶然が重なりジャン・サスポータス、大塚惇平さんが参加してくださいます。豊潤な静謐が溢れるものを目指します。
10月31日(月)
キッドアイラックアートホール
19:30開場 20:00開演
予約:3000円 当日:3500円
予約先: Tel:03-3322-5564 arthall@kidailack.co.jp travessia1027@gmail.com
ジャン・サスポータス(ダンス)http://www.jsasportes.com
カサブランカ生まれ。1975年パリでモダンダンスを始め、79年ピナ・バウシュ舞踊団のソロ・ダンサーになる。世界中の劇場で踊り続け、ピナの代表作「カフェ・ミュラー」は以来35年400回を越える。ペドロ・アルモドバル監督作品「トークトゥーハー」(アカデミー賞受賞)では「世界で一番哀しい顔の男」と評される。「カフェ・アダ・ダンスシアター」主宰。俳優・オペラ演出・振付家・ワークショップなどで活躍。合気道から派生した「気の道」(野呂昌道が始める)をマスター。
齋藤徹(コントラバス)http://travessiart.com/
舞踊・演劇・美術・映像・詩・書・邦楽・雅楽・能楽・西洋クラシック音楽・現代音楽・タンゴ・ジャズ・ヨーロッパ即興・韓国の文化・アジアのシャーマニズムなど様々なジャンルと積極的に交流。ヨーロッパ、アジア、南北アメリカで演奏・CD制作。コントラバスの国際フェスティバルにも数多く参加。コントラバス音楽のための作曲・演奏・ワークショップを行う。自主レーベルTravessia主宰。
大塚惇平(笙)http://ohtsukajumpei.com/
ヴォイスパフォーマンスの活動を通して笙の響きの世界と出会う。早稲田大学第一文学部卒業。音楽文化論を小沼純一氏に師事。田島和枝氏に笙の手ほどきを受ける。東京藝術大学音楽学部邦楽科雅楽専攻卒業。笙、琵琶、右舞、歌物を専攻。現在、笙、右舞、歌物を豊英秋氏(元宮内庁式部職楽部首席楽長)に師事。雅楽古典の演奏・研究をベースにしつつ、現代音楽や即興演奏、他ジャンルとの交流を積極的に行う。雅楽古典や他ジャンルとのコラボレーション企画、都内ギャラリーでの演奏、屋久島 益救神社、丹生都比売神社、高麗神社等の寺社にての奏楽奉仕等、精力的に演奏活動を行っている。
タイトルはミルバ+ピアソラのFinaleで歌われたフランス語のうた「ブレヒトとブレルの間」。例によって訳によって大分違ってきます。3通りの訳と原詩を貼ります。私には判断する力がありません。
ミルバ・ピアソラの東京公演はすべて観ました。ミルバ・ピアソラの蜜月の終わり頃、ピアソラキンテート黄金期の爛熟と崩壊、ピアソラにおけるタンゴと前衛の両立の幻視およびついて行けないメンバー、ピアソラのいらだち、など見所満載でした。(その結果、ガンディーニを含めた最後のグループになったのでしょう。)
フィナーレで一瞬、マイクを離し、地声で大ホールに響かせたミルバも良かったです。当時私は、今と真逆で「歌などは、演奏に劣るもの」と思っていた大馬鹿者でした。そのこだわりが解けるきっかけにもなったのだと思います。反省しきり。
ブレヒトとブレルの間
クロード・ルメール作詞
アストル・ピアソラ作曲
田中美紀 訳 (ブッフデュノールライブCDより)
人工の黄昏はライムライトの戯れ
音もなく点滅する光の中で
人物は舞台の上の青白き影でしか無く
ブレヒトとブレルの間で
道化役を演じては
芝居小屋を掃き清める
操り人形の糸を神が切ってしまうと
芸人はアルゼンチンの反逆者の如き裸体を見せる
煌々たる光が粉飾を解く目覚めの時に
巨大なリリパット人は
昨日と同じ
幼児に戻る
夜が明ける
愛を交わしたとて
心は離れ、心が白む
それが道化役者の人生
曙を前に燃え尽きる
アラジンのランプ
銀河のかなたから
私は歌を歌うのです
夢の中であなたの声に満たされて
私は目を覚ますのです
今夜もあなたと一緒に居られることに
心の底から驚きながら
黄昏は黎明に告げる
死の問いかけに雲間を示して
私に翼を与えてくれたのは
芝居と舞台とそして夢
ブレヒトとブレルの間で
影と忘却の間で
私は飾り付けを運び去るところ
あなたに「アンコール」と叫びながら、出ていくところ
道化の情婦コロンビーヌは会釈して私に戻る
私は私の身体に戻り
幕のたもとで
あなたと眠る
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
向風三郎 訳 (東京ライブCDより)
人工の黄昏が「ライムライト」を演じている
カーテンコールが止み静寂が訪れると
舞台の上で我らは淡い影でしか無い
ブレヒトとブレルの間で
道化役が
舞台の掃き掃除をする
神が操り人形の糸を切ってやると
芸人はアルゼンチンの反逆者のように裸になる
全部の照明が付き、彼は化粧を落とし、その自分自身が顔を出す
ガリバーの小国人の巨人は
前の日の姿だった
少年に戻る
夜の帳が落ち
人々は愛し合う
舞台から離れてそれぞれの本当の自分に戻る
これが旅芸人の生活さ
アラジンのランプの灯は
明け方には消えてしまう
この銀河の夜空に
私は歌う
あなたの声がいっぱいつまった夢の中で
そして私が目覚めたら
今宵もあなたと一緒に居られたことに
驚くことだろう
闇が白み、夜明けが近いことを告げる
死を押し返して現れる明るみ
それこそスペクタクル、舞台、夢、
私に翼を与えてくれたもの
ブレヒトとブレルの間に
闇と忘却の間に
わあ死は舞台装飾を積んで旅立つ
わたしはあなたに「アンコール!」と叫びながら外に出る
私、コロンビーナは恭しくお辞儀をして、自分自身に立ち戻る
私は自分自身の身体に戻って
幕の下で
あなたと眠る
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝倉ノニー訳
http://blogs.yahoo.co.jp/alfonsinayelmal/11884011.html
このサイトには詳細な注も付いています。
ライムライトが人工の黄昏を演出する
カーテンコールのあとの静寂が響き渡ったとき
もはや舞台の上の青白き影にすぎない彼は
ポリシネル役
ブレヒトとブレルの間で
幕間劇を演じる
操り人形の糸を神が切ってしまうと
芸人はアルゼンチンの反逆者のごとく裸だ
全照明が彼の化粧を剥ぎそして彼が目覚めるとき
巨大化した小人は
前夜と同じ
子供に戻る
夜が明ける
私たちは愛を交わした
私たちは舞台を忘れる
それが旅役者の生活
夜明けを前にして消える
アラジンのランプ
私は歌うわ
あなたの声に満ちた夢のなかで
銀河を飛翔しながら
そして私は目を覚ますのよ
今夜もあなたと一緒にいられたことに
心底驚きながら
薄明かりが黎明を告げる
死に対峙する雲間
それは演劇、それは舞台、そして夢
それらが私に翼を与えてくれた
ブレヒトとブレルの間で
影と忘却の間で
私は舞台装置を運びながら発つわ
あなたに「アンコール」と叫びながら去るわ
私ことコロンビーヌはお辞儀をして私に戻るのよ
私は自分の体に戻り
幕の裾で
あなたと眠る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Entre Brecht et Brel
Claude Lemesle lyrics
Astor Piazzolla music
Un crépuscule artificiel joue “Limelight”
Quand le silence des rappels éclate
On n’est plus rien qu’une ombre pâle sur un plateau
Qui polichinelle
Entre Brecht et Brel
Et balaie le tréteau
Quand un dieu coupe ses ficelles de pantin
L’artiste est nu comme un rebelle argentin
Quand les pleins feux le démaquillent et qu’il se rêveille
Le lilliputien géant
Redevient l’enfant
Qu’il était la veille
Je vais chanter
Sur la voie lactée
Dans un rêve plein de ta voix
Et je vais me réveiller
Tout émerveillée
D’être encore ce soir avec toi
Un crèpuscule qui annonce une aurore
Une éclaircie en réponse à la mort
c’est le spectacle, c’est la scène, et le rêve qui
m’ont donné des ailes
Entre Brecht et Brel
Entre l’ombre et l’oubli
Je vais partir en emportant le décor
Je vais sortir en te criant “encore“
Moi Colombine qui salue et redeviens moi
Je me rentre dans ma peau
Et sous le rideau
Je dors avec toi.