早川純スペシャルキンテート演奏曲こぼれ話
ビジュージャ
高場将美さんによるタイトルの由来は「一番好きなもののタイトルにしたら?」「じゃ、お金だ。」
でビジュージャ お金を表すスラング。リーダーはコントラバスが弾きやすいようにイ短調にしてくれています。本来はロ短調。
ブエノスアイレス午前零時
この曲をカバーする人達は、揃って、ベースが同じパターンを繰り返す上で「自由」な音を出すようです。でもそれは「自由」では無い「それ風な」だけがほとんどです。私はそれを避けるためもあり、ベースパターンの音を抜いたり、戻したりしてソリスト達に刺激を与えました。(即興的に思いついた方法でした)
トッカータ
鍵盤楽器の調律をした後に調律具合を確かめるための曲というのが元の意味。バッハのトッカータ(オルガンで弾く有名な「トッカータとフーガ」ではなくピアノソロ)はグールドが弾くともの凄く即興性が見えます。通奏低音をミにしてくれてベースがやりやすくしてくれています。なにしろリーダーは元コントラバスを目指したことがあったとかで随所にありがたい配慮があります。
オブリビオン
大変有名になってしまった曲です。バイオリンとピアノに十分歌わせる手法。後半のサビ部分で3:3:2のピアソラビートを効かせる方法はミルバsessionを踏襲。
コントラバヒシモ
ピアソラのコントラバスフィーチャー曲は「コントラバヘアンド」「キチョ」「コントラバヒシモ」です。その他、「革命家」がキチョ・ディアスに捧げているということを高場さんに聞きました。私が考案したコントラバスのジュンバ奏法を多用しています。途中でペンタトニックになるメロディは日本民謡やエンヤトットを思い出します。西洋人にとってのペンタトニックって一体どういう風に響いているのでしょうか?興味アリ。
アウセンシャス
不在。ギターとバンドネオンのためのダブルコンチェルトの2楽章に使われたメロディがあります。不在とは、「無い」ことではなく、「不在がある」と思うと違って見えます。
タンゴエクリプス
小松亮太さんと私がソロで神奈川フィルハーモニー管弦楽団と演奏した時、作曲しました。ジュンバやカンジェンゲ(打楽器奏法)、五拍子、即興的なリズム譜などを盛り込みました。今回は第1楽章のみを演奏。
リーダー新曲
この日のために作ったというまだ名の無い曲。少し前にお父さんになった早川純さんの我が子に対する愛情を感じてしまいました。
エスクアロ
ピアソラのカンドンベ曲。アフリカリズムの要素が強く、ウルグアイで盛んに演奏されているリズムです。タンゴはタンゴ・ミロンガ・ワルツ・カンドンベとジャンルがあります。「私は黒い」というカンドンベもピアソラにはあります。
ルナ
ミルトン・ナシメントに捧げた「ミルトンの肖像」が元になっている大曲。ピアソラ最後のコンフントである六重奏団(ジェラルド・ガンディーニのピアノ、ダニエル・ビネリとのダブルバンドネオン、バイオリンの代わりにホセ・ブラガードのチェロという冒険に富んだ音でした。)で盛んに演奏されました。私にとってはミルトンとピアソラの関係に興味津々です。ピアソラはCD「タンゴゼロ・アワー」のキーワードとしてキロンボを上げていて、キロンボはブラジルの逃亡奴隷。ミルトンには「キロンボ達のミサ」という録音があります。
イマヘネス676(アンコール)
躓くように蕩々と流れるベースラインが素晴らしいし、5拍子でたたみ掛ける部分が私のツボです。
ライブハウスの住所がタイトルだった記憶あり。