traveling aloud @フタリ 

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即興演奏の場合は、その場の状況(空間・聴衆・スタッフ・雰囲気・体調・世の中の動きなどなど)が最大の影響を与えます。それは常々感じることです。昨夜は露わになりました。

状況に影響されると言うことは、ある意味で「良いこと」です。どんな状況でも自分の「表現」を貫くというのは、一見プロのようですが、即興の考えからほど遠い。「良い」条件で「良い」演奏ができるなんて当たり前です。そんなのツマラナイ。ライブではない。

状況への対応こそが演奏者に問われることです。もちろん流されっぱなしではイケナイし、世界を小さくしてはイケマセン。To enjoy the difficultiesというザイ・クーニンとよく話したトピックを思い出します。

Ftarriは、オーナー(鈴木美幸さん)の人柄と音楽に対する情熱が溢れ、仲間・理解者と共に守ってきた希有な素晴らしい空間です。精神的なストレスは皆無。一方、梅雨ど真ん中の東京水道橋の雑居ビルの地下は、湿気が居着いています。美幸さんがずっとエアコンで除湿してもこの湿気が楽器に弦にまとわりつきます。しかし、本日の出演者3人とも、その困難をエンジョイしています。ジャックの指は鍵盤の上で上手く回らず、私の弓の松脂はガット弦をすべってしまいます。深山さんも同様です。

しか〜し、ジャックはすべらないことを利用した奏法をあみ出し、随所に「聴くだけ」という演奏をし、私は、高次のハーモニックスの使用を少なめにしピッチカートを多めにしました。いきおい、三者とも低音弦のピッチカートが交錯して低音弦トリオになる場面が多くなり、そして、そこがとてもスリリングで高揚しました。

深山・マクイーン・時田さん(私の娘と同じ歳!)は、初対面でした。沢井一恵さんの「スゴイのが現れたよ」との推薦です。昨日は田中悠美子さんに日本の「妹のチカラ」を感じましたが、今夜は娘と同じ歳の深山さんに大きな「母性」のようなものを感じました。

空間全体がミストで覆われていてすでに異空間になっています。そこに十七絃の大きな木のボートに乗って3人で浮遊している感じでした。ジャックと「floating」という単語で納得しあいました。特に第2部はジャックにとっても全く普段と違うユッタリと浮遊する音楽でした。

オーストラリアというアジアとヨーロッパが混在した出自を持つ深山さんは、十七絃を電車で運ぶという強者です。十七絃を知っている方はそれがどんな状況かおわかりかと思います。加えて、親世代のオーバー60の2人と一緒に完全即興を80分やるというのはさぞかし大変な事でしょう。

しかし、一切動じず、よくある「特殊技法の羅列」に陥らず、自己表現に汲々とせず、まして「勝ち負け」ではなく、よく「聴き」よく「待ち」よく「信じて」演奏なさっていました。立派でした。その大きさが「母性」を感じさせたのでしょう。あるいは観音性。今後本当に楽しみな逸材です。しかし、よくありがちですが、彼女がどのようにどれだけ優れているかをご本人もあまり認識していないようです。まわりが、特に年長者が盛り立てねばなりませんね。

「とても自然な流れだった」という感想を何人にも聞きました。宜なるかな。南無。

毎日が全く違っています。
そして今夜は琵琶の久保田晶子さんです。
琵琶の歴史、琵琶に関わった幾多の人々の夢や願いが、晶子さんの身体を借りて、ジャックや私に反射してどのように現れるのでしょう?

疲れている場合じゃないよ、テッチャン。

ジャック・ディミエール Traveling Aloudツアー 残りあと3回!

7月21日(木)七針     ゲスト:久保田晶子(琵琶)
7月22日(金)茶会記    ゲスト:かみむら泰一(サックス)
7月23日(土)Candy    ゲスト:黒田鈴尊(尺八)

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