クリス・ヴィーゼンダンガーさん・ジャック・ディミエールさん
スイスを代表する2人のピアニストがほとんど同時に来日します。
私は、おふたりともこの5月にスイスで共演し、今回のおふたりの来日公演に関わっています。
素晴らしいピアニストであり、素晴らしい人間です。
おふたりとも日本に対する思い入れがあります。クリスさんは、奥方が日本人声楽家(現代音楽を得意とするそのえさん)なこともあり、日本語も話すことが出来ます。自然体で謙虚な感じは、日本人が失ってしまったかつての日本人のようです。ジャックさんは日本を題材としたロラン・バルト「表徴の帝国」川端康成「名人」をモティーフにした作曲をして来日したことがあります。
その2人が同時期に来日。しかもゲストとして迎えるのが共通して邦楽・雅楽系のミュージシャン中心となると、単なる偶然を越えている気がします。
クリス・ヴィーゼンダンガーさん:
彼の基本姿勢がわかるCDはおそらく「acoustic solo piano works volume one」でしょう。「一瞬」「拍子木」など日本語のタイトルの曲もあります。
ECMのピアニストのようなトラック、泣く子も黙る激しい現代特殊奏法のトラック、ほとんどブルースなトラックなどが渾然一体となっています。
このようなタイプのミュージシャンは日本ではなかなか評価されにくいかも知れません。ブルースやジャズならそれだけ、ECMっぽいならそれだけ、激しいインプロや現代音楽ならそれだけを演奏するミュージシャンのほうが、聴衆も迷わずに集まるでしょう。が、この渾然一体こそが彼なのです。
かく言う私もいろいろな種類の音楽をやっているのでその傾向があり、聴衆も集中しにくい。しかしジャンル「齋藤徹」として長年やっていればこの前のソロリサイタルのような聴衆が集まってくれることもあるのです。
ジャンルは「クリス・ヴィーゼンダンガー」です。
彼の住むチューリッヒは、湖を囲む大変美しい街です。駅には巨大なニキ・ド・サンファルの彫刻が空を飛び、駅近くの教会のステンドグラスがジャコメッティだったりシャガールだったりします。100スイスフラン札(日本でいうと10000円札)もジャコメッティです。
物価は大変高いのには驚きました。クロワッサン一つで400円!だったり。秩序も保たれ、電車・バス・トラムも時間に正確(日本以上)、そんな「ちゃんとした」街です。
「ちゃんとしている」裏には、さまざまな矛盾やストレスがあるはずです。永世中立国である一方、徴兵制があり、ユーロを使わない、スイス銀行の闇の部分の歴史、北朝鮮との関係も持続しているなどもあるでしょう。徴徴兵拒否のために薬物中毒に敢えてなる若者、その過程で注射針によるエイズ感染が多いなどは近未来の日本も見えてくるようでゾッとします。
かつてバブルの頃、スイス人ジョルジュ・グランツが贅沢なメンバーのビッグバンドを率いて来日公演をしたことがありました。その時のスポンサーもスイスバンク、ジョルジュは皮肉を込めたように「すばらしいじゃないか?」とMCで言っていました。
そのような状況が音楽家や美術家を通して作品として出てくるのではないかと推察します。そこから興味が国外に向いたり、日本へ対する憧れに繋がったりするのかもしれません。
人間たるもの、キチンとばっかりやっていられないのです。
私と3回目のなる5月のクリスとの共演は、ヴィオラ奏者シャーロット・ハグさんのハウス・コンサートでした。代々イタリアオペラの指揮者の家系であるシャーロットさんご主人(ルカさん)宅は、かつては毎日のように昼・夜問わず来客があり、飲食の接待をしていたとかで、ハウス・コンサートのプロデュースも見事でした。
そんなお宅にある由緒正しきグランドピアノをいささかの遠慮もなく、自分の人生・音楽を賭けて、激しく弾きました。それをニコニコと見守るルカのお母様(隣のヴィラ・プッチーニで生活)。やっぱり文化の層が厚いです。
今回の首都圏ライブは、旧知のかみむら泰一さん(サックス)・大塚惇平さん(笙)・松本ちはやさん(打楽器)と私でCandy・エアジンと続きます。このプロジェクトは、クリスさんの作曲もので録音しCDにするというものです。今回はその手始めになるそうです。いいですね〜このようにゆっくりと着実に音楽活動をするなんて・・・・。忙しすぎて消耗するばかりの日本の音楽活動と違います〜。
是非、お立ち会いください。
7.13wed.20:00-@稲毛Candy
クリス・ウィーゼンダンガーSpecial New Project
オリジナル&即興
クリス・ウィーゼンダンガー(piano)かみむら泰一(T&sopSax)
齋藤徹(Contra bass)大塚惇平(笙)松本ちはや(パーカッション)
千葉市稲毛区稲毛東3-10-1
043-246-7726 MC前売り3000当日3500
7.14thur.19:30-@横浜エアジン
クリス・ウィーゼンダンガーSpecial New Project
オリジナル&即興
クリス・ウィーゼンダンガー(piano)かみむら泰一(T&sopSax)
齋藤徹(Contra bass)大塚惇平(笙)松本ちはや(パーカッション)
1st stage 19:30〜 / 2nd stage 21:00〜(入れ替えなし)
live charge ¥2500+D (予約¥2300)
U23 ¥1500+D 高校生¥1000+D 中学生以下無料。
<予約>http://yokohama-airegin.com/contact.html