日記風に日乗のアリバイ
つくばでのうたをさがしてトリオツアーラストギグが終演し、私は一泊しました。圏央道も開通し、常磐道も充実して、つくばエクスプレスもあり、すぐ帰ることはできます。都民にとっては横浜や千葉のような感覚でしょう。しかし、アート作家、キュレーター、そしてつくばの風土と親しくなりたいと思って一宿一飯をお願いしました。
なにしろアーティスト・イン・レジデンスで世界各国から24名を同時に招いたこともあるところです。投宿したのはその巨大な古民家でした。この一軒の古民家に24名が泊まれる!わけです。駅前の学園都市とは次元の異なり、様子も全く違います。養蚕などで大いに栄えた土地。大きな古民家が沢山あります。美術家・キュレーター・建築家さんと酒を呑み遅くまで楽しく語り合い、さまざま確認しました。ご縁があって知り合った人達が、こうやって実際に顔をつきあわせてゆっくりと食べたり呑んだりしてしゃべることが本当に大切なことを再確認。自分の部屋へそそくさと帰り、ネットを繋げて孤独を騙してはモッタイナイ。表情・抑揚・無言・しぐさの中にどれ程多くの情報が含まれていることか、生きることを肯定できるものに満ちています・・・LIVEと録音の差と同じでしょう。
翌朝、「つくば降ろし」の寒さも気が冴え冴えとして昨晩の痛飲の二日酔いも吹っ飛びます。朝食をすませ、車を走らせてもらい、古民家を活用した「華の幹」(はなのき)訪問。昨日のLIVEにも来てくださった二人がいらっしゃいました。お一人は木の繊維を解しています。聞くと「マニラ麻」ということ。この繊維で作ったロープは水にめっぽう強く、舟の舫い(もやい)に最適。アジア・アフリカまで拡めて行こうという意図をお持ちで、縄をなう器械も輸出・紹介したり、作業を指導したりするためにフィリッピンまで近々行くとのこと。学者さん・神父さんも兼ねていらしていままでも豊かな交流を続けてきているのです。ルソン島のバギオには特別な思い入れがあるとのことでした。精巧な折り紙・葉っぱ細工をなさる方がコーヒーを淹れてくださいました。この古民家は特に立派に建てられていて能舞台さえあります!
昨日「河の始まり」を演奏しましたが、それにちなんだ話として、むこうの山に河の始まりがあって、つくばでは治水が複雑でその利権が政治・経済に絡んでいるとの話も伺いました。こういう話もなかなか聞けません。また、LIVEの時に作品を展示して下さった四人の内の一人 藤井龍徳さんは、縄に関しては日本有数の専門家であり、縄をなう器械を多数所有していることが分かり、フィリッピンへの器械の贈与などの交流が始まったそうです。本当の奇跡も人知れず起こっていたのです。気がつかなければ何も起こっていないのですが、気がつけば実に豊かな交流の奇跡が始まっているのです。今、自分がどこにいて、なにが周りで起こっているのか、認識することができれば、憂き世を逆転できます。そうしたいです。
昨晩、演奏が気に入ってくれ、寝袋を持って呑みにきてくれた建築家さんのお宅訪問。庭先のすばらしい借景のベストポイントに東屋を建てて景色を愛で、BBQを楽しむ。人生楽しむのです。ハクビシンや狸の話も面白かった。お茶菓子にカンボジアやミャンマーからのお土産をいただきました。日常の中にいろいろな文化がフツーに混じり合っています。
都会の携帯ショップでの待ち時間、流れている音楽のあまりにもイージーな内容にこの世のものかと呆れてしまいました。つくばにはまだ何か大事なものが残っている、いや、残そうとしている人々がいるのだなと実感。場より人?いや場と人、両方でしょう。
ビュンと東京へ戻りポレポレ坐で「土神と狐」のリハーサル。客席作り、台詞・楽器の音の響き、舞台の使い方チェック。ていねいなリハーサルは演劇独特のもの。音楽のリハーサルはなるべく短時間にしてあとは自宅でやっておく、というのと様子が違います。深夜ようやく帰宅。
翌日、庄﨑隆志さんと「みんなの手話」の中のコントリハーサル。ここでも宮沢賢治を扱うことになりました。なぜか重なります。庄﨑さんの手話による「雨ニモマケズ」は美しい~。ロジャー・パルバースさんが「雨ニモマケズ」を「Strong in the rain」と訳したのを思い出しました。1から10までの数字を使った銀河鉄道ゆかりの話はインスピレーションに満ちています。私は車掌役も授かり、車掌帽子も、ホンモノの切符切りを小道具として使う事になりそうです。
月末の韓国公演の演奏VISAの書類を書きました。ジャンさんの公演VISAで本当に苦労をしたことがトラウマになっていて気が重い重い。何枚もの書類を書き、確認し、写真を撮り、貼り・・私が大変苦手とする作業です。二の橋の領事部へ提出。
世話になっている楽弓店・店主の還暦誕生日に顔を出し、どこかでランチでお祝いしようと思ったら逆にご自宅で豪華ランチ・高級ワインをいただいちゃいました。あらら。
ロシア人ベーシストに楽器をお貸しするために、楽器修理・調整にだす。いままで世界中で何回も楽器をお借りしているので、お返しをせねば成りません。昨年、手に入れたフライオーレをお貸しします。
なってるハウス、スタンダードジャズ用にマイク・アンプ・スピーカー・ピックアップ・電源の選択・試奏。これも私の苦手の作業。オーディオ的に良いものが現場で良いことはほとんど無いし、メンバーによってまったく違ってしまう(無音状態に耐えることができるか?コントラバスの音質や倍音にしっかり意識があるか?単に「聞こえる」音だけを頼りに演奏してしまうか?)ので、無駄な作業のような気もしてしまいます。ともかくやるっきゃないわけで・・・
忙しく時間が流れて行ってしまいます。これでいいのだろうか?