第1日目終了後のFacebook投稿より
受け取ることばかりに熱心で、与えることを忘れがちな世の中です。与えただけしか受け取ることはできません。しかし、与えただけは確実に帰ってきます。少しでも良いのです。回ってきたら、次の人・次の場所・次の時間にパスをするのです。その一つ一つが積み重なれば無限のgive、無限のreceiveになるかもしれません。
回って来た以上にパスを回し、心から幸せな人達もいます。志保さんはその部族でしょう。呼吸と一緒です。最後まで息を吐ききったら、自然に大量の新鮮な空気が入ってきます。思わぬものも入ってきたり。
親しい友人(スペイン人フラメンコ歌手)を前日に亡くした志保さんのソレアとサエタは、尋常ではありませんでした。それはその場に居た全ての人に伝わりました。自分の生きる方法として踊りました。みんなが大きなパスをもらいました。
本日ももう1回あります。それぞれのパスを回しましょう。
第2日目終了後
フラメンコの魅力は「信じる」ということに集約されるのかもな〜とリハ、公演中感じていました。いたずらに効果を求めず、人間の持っている「身体」「声」を信じていること、それを脅かす、あるいは手軽に越えてしまう文明の利器には慎重。身体ごと絶叫し、身体を叩き、地団駄を踏む。リハと本番の区別はありませんでした。「人間そのもの」を信じている、信じたい、さもなくば生きるって何なんだ!この哀しみは、この歓びは何なんだ?ということなのかもしれません。
その一つの現れとして、演奏に比べて歌と踊りへの尊敬・優位があります。「ギターソロ?なんでそんなつまらないことをやれって言うんだ?」と俵英三さんがしきりに言っていました。ギターは歌と踊りの為にあるのです。ギタリストは歌手の口元・ダンサーの足さばきを食い入るように見ながら、感じながら演奏しています。
(言葉のハンディもあるのでしょうが、ニッポンでは演奏がもてはやされがち。ある意味フラメンコ以上に濃密な語り手と伴奏の関係のある「文楽」という伝統は遠くに行ってしまったのでしょうか。)
一枚岩に見えるような「はな8」でのフラメンコチームも内部は複雑な関係があったことを打ち上げで知りました。グラナダ出身のエミリオさんは由緒あるヒターノの家系、へレス出身のマヌエルさんはヒターノの伝統を身体中に濃厚に醸し出しています。コントラバスを間近であまり見たことの無いマヌエルさんは「こんな大きなギターで歌うのか?」「この家具が伴奏するのか?」と冗談とも本気ともわからないように言っていたそうです。フラメンコだけで純粋培養されたような「純フラメンコ的身体」の彼らには「音楽」という指標しかないのだと言います。
そんな彼らにお世辞半分でも褒められたことはとても嬉しいことでした。その2人の中に、ディエゴが居ます。ディエゴはヒターノではありません。彼にとってマヌエル、エミリオと一緒に舞台に立ち歌うことがどんなに名誉で嬉しいことであることか、と強調していました。ディエゴは「あんな凄いマヌエルさんの歌を聴いたことがない、目に涙さえ浮かべて歌っていた!」と感動しています。自称「フラメンコお宅」のディエゴさんのお蔭で様々な情報と知識を得ることが出来ました。歌も素晴らしかった!
要所要所で的確なアドバイスをくださった柴田亮太郎さん。言葉が出来ないことは本当に悔しいことです。私としては、コントラバスチームをまとめなければならないという第一任務があるのでフラメンコチームと深く・気軽にふれあうことは出来ませんでした。亮太郎さんが間に入ってくれたことは、本当に有り難いことでした。
それにしても、そんな男どもをまとめる「場」を作り上げ、化学反応を起こさせた志保さんの「人間力」は凄いですね。
ディエゴさんと2人のヒターノの関係は、韓国での巫族(シャーマン)とのつき合いを思い出さずには入れませんでした。巫族も最高に洗練された音楽集団でもあります。私の関係した東海岸巫族・珍島巫族の音楽は本当にすばらしいものでした。社会的差別はいまだに厳しく、いきおい、血族のみでなりたっています。しかし、巫族の家系でないのにその音楽に「当たって」しまい、深く入り込む人がいます。そしてそう言う人が必要なのです。
CD「神命」は巫族(金石出)と安淑善(国楽)・李光寿(農楽)と私とのセッションでした。安淑善さんも李光寿さんも金石出さんの音楽を大変尊敬して、手本としていますが、社会的身分的差別ゆえに共演はなかなか叶わないことと言います。変な日本人の私が居たために成り立ったと言うことでした。
鄭喆祺(チョンチュルギ)さんは巫族の音楽に強く惹かれ全国の巫族の元に通い音楽を習っていました。フラメンコ同様、もちろん楽譜などはありません。私は、鄭喆祺さんとの「翻訳」で随分習いました。
そして巫族の12拍子をフラメンコの場で試してみるという私の秘かな企てがエピローグで実現しました。サエタからソレアという完璧な流れと尋常ならざるダンスと音楽で、この公演は終わることも十分出来ました。実際、興奮と感動で鳴り止まぬ拍手の嵐でした。その中をコントラバスクインテットが出ていってエピローグを演奏することが直前に決まりました。(出にくかった〜)ここで私はその12拍子を試したのです。あのソレアの後には西洋楽器コントラバスの普通の奏法はもはや無効ですので、打楽器的奏法(もう30年以上やっています)を駆使しました。
聞くところによるとエミリオさんもこれが始まると身を乗り出してきて集中して聴いてくれ、終わるや「オレ!」の掛け声を出してくれたとのこと。客席からもオレが随分かかりました。大げさに言えば、ユーラシア大陸の西と東の果ての半島の被差別人達のリズムが呼応したのかもしれません。
ソレアで普通に(興奮の大団円ですが)終わらずこのエピローグを付け加えたことでパズルがピタッと埋まった気がしました。エピローグ中に、初日ではゆっくり歩いて舞台中央に向かった志保さんが2日目は激しく踊りながら出てきました。先へ繋がる何かがあるのかも知れません。
歌と踊りに徹底的にぶん殴られ受け取ったパスを本日から「うたをさがしてトリオツアー」として回していく番です。
ご来場ご検討くださいますようお願い申し上げます。
https://www.facebook.com/lookingforsongs/
本日は↓。
◉11/22・東京
Message2015 おしゃべりなArt展 内イベント「うたをさがして」トリオスペシャルライブ
2015年11月22日(日)19:00開演
会場:ギャラリー悠玄
http://buff.ly/1Oo5Mqv
東京都中央区銀座6-3-17悠玄ビル
料金:2,500円(要予約)
予約・問合わせ:Tel:03-3572-2526 Mail:g-yougen@s7.dion.ne.jp
地下展示スペースは三島由紀夫が集会で使ったそうですし、階上には日本有数のシェリークラブがあります。