徹の部屋vol.38 

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さて、ポレポレ坐徹の部屋vol.38 かみむら泰一さんとのデュオが近づいて来ました。ショーロと私のオリジナルをやります。

ショーロと言っても何のこと?ショールやショーロンポーは知ってるけど・・・という御仁もいらっしゃることでしょう。

ブラジルの(主に)器楽曲で、「涙」とか「泣く」とかの意味だそうです。ちょっと「おセンチ」なところもあります。すこぶる技巧的であっても豊かな音楽性はしっかりキープされています。その技巧は「演奏性の高さ」と密接につながり、演奏の楽しさ、楽器の鳴り、名人芸のすごさなども伝えることができます。シンコペーションを効かせた2ビートリズム、中庸な速さ、短調の部分で泣かせてから長調になってまた短調に戻ってというのが典型的スタイルです。ショーロの形式をとりいれた「シェガ・ジ・サウダージ」(思い溢れて、ジョビン・ヴィニシウス)がボサノバ第一号と呼ばれるように長い伝統を持っています。

私はもう長い間、寒い季節はバッハを弾くのですが、暑い季節はショーロにしています。ピッタリです。即興の本番ばかりで練習をしないと確実に腕は落ちます。(特に高齢者は要注意ですね。)かといってつまらない練習曲を根性で弾いていると、自分の音楽性までつまらなくなってしまうのです。これも要注意です。ショーロの中で音楽性豊かな代表がピシンギーニャとラセルダの共作の数々です。

あのミッシェル・ドネダも本番以外ではショーロやトリスターノを吹いています!ウーグ・バンサンも「弾くよ」、と言っていました。

今回はピシンギーニャとラセルダの音楽性豊かな曲を中心に(豊かに)演奏したいと思っています。速い・技巧的な曲では「鱈の骨」と「デスバイラーダ」を取り上げます。「鱈の骨」は高柳昌行さんが「何回か管楽器奏者とトライしたけれどできなかったんだ」とずっと言っていました。泰一さんのサックスをお聴かせしたかったな〜と思いますね。デスバイラーダはガロートという天才的ギタリストが作ったショーロ、教則曲のようでもありますが、楽しい曲です。これらの曲を難なく吹いてしまう泰一さんは見事です。

後半は私のオリジナル曲集になります。サックス奏者との共演はドネダさんとのインプロばかりでしたので、オリジナルをサックス・ベースでやるととても新鮮で、驚きに満ちています。やはり、野外の楽器の代表と室内の楽器の代表なので、音量差が問題になります。そこは、ドネダさんもそうでしたが、音の大きなサックス奏者がいろいろと工夫をしてくれます。

E♭リディアンのポプリはベースアンサンブルでよくやっていましたがサックス・ベースデュオで同じように連作を大きな流れでやってみます。まったくちがう風景が見えてドキドキします。

大きな音に合わせてベースがアンプやPAをつかうとせっかくのニュアンスがでませんし、プレーンガット弦を使っている特徴も減ってしまいます。泰一さん、どうかひとつよろしくお願いいたします。他所で思いっきし吹きまくってください。

デュオを初めて10ヶ月、ここまで来ました。

是非、ご来場ご検討くださいますようお願い申し上げます。

徹の部屋vol.38「 Two is company」
■日時:2015年8月29日(土)19:00 open / 19:30 start
■出演:かみむら泰一(サックス)、齋藤徹(コントラバス)
■料金:予約2,500円/当日3,000円(ワンドリンク付)
■予約:03-3227-1405(ポレポレタイムス社)Email : event@polepoletimes.jp
【かみむら泰一コメント】
4,5年前に、横浜エアジンで初めて齋藤徹さんの主催するベース5人のアンサンブルを聴きました。その時の衝撃がいまだにわすれられません。そのころは東京の即興シーンで活動していて、自分の求める音世界、在り方はどういうものか、探していた時で、齋藤徹氏の音にヒントがあるとその時、直感しました。その後何度か演奏を聞きにいき、昨年から齋藤徹氏と共演を始め、今年は定期的にDuoをベースに演奏活動を行うようになりました。共演をするにあたり徹さんが私の作品を聴いて、ショーロを一緒に演奏してみないかと提案してくださったのが、Duoの第一歩目のように思います。今まで聴いたことのなかったブラジルのショーロ、ショーロを演奏する中でこの音楽は「よりそう」音楽だなあと思いました。ジャズとは、反対のベクトルの音楽(ジャズは,個性重視、自己主張の強い音楽)だなと。共演を重ねる中で、いままでの自分の音、響きの空間の感覚も、1,2回と揺り動かされ、一から道具を見直し楽器のセッティングを試行錯誤しました。自分の音、響き、空間感が、以前よりも小さな変化で表現できるようになり、音世界が広がりをもって感じられるようになりました。そしてダンサーのジャン・サスポータスさんや荻野竜太郎さんとの共演により、身体性ということと、重ねて即興演奏について、改めて「開かれた意識、世界へ」ということが、即興演奏という表現方法がもっている重要な要素だと認識するようになりました。さて今回は今一度Duoに立ち返り、向き合いどんな果実を収穫できるか、皆さんでこの場をシェアできれば幸いです。
【齋藤徹コメント】
泰一・徹デュオシリーズは「ブラジルのショーロ」と「インプロ」を演奏しようと泰一リーダーで始まりました。
その後、ジャン・サスポータス(ダンス)やタツヤ・ナカタニ(パーカッション)とのインプロセッション、
橋本学(ドラムス)とのジャズセッション、竜太郎10番勝負!での多ジャンルフリーセッション、池内晶子
(インスタレーション)とのセッションを経て、演奏内容もどんどん変化しています。
そしてなにより私たち自身が自らの変化を楽しく受け入れています。
今回初めて名前の順序が逆にしています。徹のホームポレポレですので、徹の選曲で行うための変化です。
もはや、ショーロ、オリジナル、ジャズ、インプロなどのジャンルの違いという意識は無くなっています。
ゆっくり、ていねいにやってきた成果だと思っています。
真夏の宵に、しっとりとベースとサックスのデュオ、いかがでしょう? 齋藤徹
☆かみむら泰一 (サックス)
響きと空間とジャズをテーマに独自な音楽を創作している。ジョージ大塚We Threeでプロデビュー、99年にNYでサックスの巨匠Dewey Redman(~2006)より直々に指導を受ける。15才のときにサックスに出会う。山口真文氏、須川展也氏、大室勇一氏に師事。東京芸術大学別科卒。バークリー音楽院卒。EWEレーベルより2枚のアルバムをリリース かみむら泰一Quartet「A Girl From New Mexico」(市野元彦g、西川輝正b、鳥山タケdr)「のどの奥からうまれそうなかんじ」(Ben monder、Drew Gress、市野元彦、鳥山タケとのNYレコーディング)。2008年 是安則克b(故)橋本学drとサックストリオを結成、2011年 是安,橋本とバンド「オチコチ」を立ち上げる。その後オチコチは是安氏の他界(~2011)により橋本とのユニットとなり毎回ゲストベーシストを迎えて演奏活動を行っている(主なゲスト:吉野弘志、早川岳晴)。2012年10月 自身のK`s Project レーベルより「オチコチ」をリリース(是安則克b、橋本学dr)。2014年からベースの齋藤徹とDuoでショーロと即興演奏をはじめる。近年はオーネット・コールマンのフリージャズにも取り組み、不定期にオーネット・コールマンジャムセッションを企画している。4ビートという特殊なリズムの中で、従来の各パートの枠組みから、それぞれが自立し、全員で作り出す音楽の新しい在り方を模索。
☆齋藤徹(コントラバス)
舞踊・演劇・美術・映像・詩・書・邦楽・雅楽・能楽・西洋クラシック音楽・現代音楽・タンゴ・ジャズ・インプロビゼーション・韓国文化・アジアのシャーマニズムなど様々なジャンルと積極的に交流。ヨーロッパ、アジア、南北アメリカで演奏・CD・DVD制作。
コントラバスの国際フェスティバルにも数多く参加。コントラバス音楽のための作曲・演奏・ワークショップを行う。齋藤徹・喜多直毅・さとうじゅんこの「うたをさがしてトリオ」では2作のCDを発表。自主レーベルTravessia主宰。

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