タンゴダンスと能の舞

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タンゴダンスと能の舞

ダンスの訳語として舞踊・舞踏・おどり とありますが、曖昧に使っている場合も多いようです。一番古い言葉は「舞踏」古代中国の言葉で儀礼的動作を表していました。明治になってダンスの訳語として復活しますが、だんだんその訳語は坪内逍遙発案の「舞踊」に取って代わられ、最近では暗黒舞踏に使われ、BUTOHと言う国際語にもなっています。

「舞」は旋回運動を指し、静止した立ち姿、個人的、内部に込められた宇宙の密度、迎え、語り物系の芸能に使われる。
「踊」は跳躍運動を指し、歌を結びつき、集団的熱狂性をも帯び、時空を越えた全宇宙の姿、送りの芸能に使われる。

こう調べるとはっきりしてきますね。
能は舞うもの、土方巽の言葉による「舞踏とは、つったった死体」、「まわる」も「まう」から来ているとな。
踊は跳ぶもの、ねぶたまつりラッセラーの「跳ね人」、タンゴの「たてのり」、盆踊りはみんなで霊を送る、そしてTLFのミロンガ熱狂もまさに踊です。
踏は踏みしめるもの、悪霊が出てこないように地面を踏みしめる。「道」は異族の「首」をもって邪霊を祓い清めることから(白川静)。

タンゴの究極の2ビートはプグリエーセの発案による「ジュンバ」でしょう。彼の弾くピアノは右手も左手もほとんどノイズです。プグリエーセ特有の左右に身体を揺らしながらビートを出していきます。その全盛期は聴衆すべてが足を踏み鳴らし、その音は隣町まで響いたという伝説が残っています。30年前にブエノスで共演したとき、お嬢さんのベバ・プグリエーセの楽団の演奏を聴くことがが出来ました。それは、ホンモノのプグリエーセ楽団のジュンバとはちょっと違っていて、これこそかつてのオトーサンはこうだったのだろうな〜と思えるジュンバでした。

たてのり、で、跳ぶ、こと、そこに回転運動も付け加える、何かに取り憑かれるように踊ることで「下手な考え」から自由になる。混ぜる。思い出す。

さて視点を変えて「dance」の語源も調べてみると、「緊張と緩和の連続」だそうです。そこから「跳ねる・跳ぶ」そして「舞う・踊る」を意味するようになったと。

TLFのミロンガは、本当はエンターテインメントではなく儀式をつつがなく行うためのものであり、魂の送り出しなんだ、と思うと妙に合点がいきます。

一方、来週「挟み撃ち」の特別ゲスト久田舜一郎(小鼓)さんによると、能もかつては跳躍も含んだ激しいものだったということです。その激しい動きを身体の中に押し込めている緊張感が仮面の表情を替えていくのかもしれません。
タンゴダンスの熱狂と能の静的な舞いは、舞踊の二大要素を象徴しているもので、隣り合わせのものとも考えられます。
エル・チョクロから一週間隔ててキッドアイラックホールで行われるLIVE「挟み撃ち!vol.5」をそんな視点から観て聴いてくださるととても興味深いと思います。真逆のように見えたこの2つのLIVEは踊りという視点で深く繋がっていたのです。

6月30日(火) 開場19:30 開演20:00
出演:齋藤徹(コントラバス)喜多直毅(ヴァイオリン)
久田舜一郎(小鼓・声)
会場:KID AILACK ART HALL(明大前)
〒156-0043 東京都世田谷区松原2丁目43-11
03-3322-5564
料金:予約¥3,000 当日¥3,500
ご予約・お問い合わせ:
電話 03-3322-5564
メール arthall@kidailack.co.jp

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