年末の手術をした卒寿の父親を視野の中に入れながら、事務やらコンサートのリハやらをしている新年です。1月9日の沢井一恵リサイタルに演奏する西村朗作曲「かむなぎ」。オリジナルは17絃箏とパーカッションのために緻密に書かれています。このパーカッションパートを「コントラバスでやってみて」という一恵さんのアイディアで何回も演奏しています。
この曲が韓国の伝統音楽の長短(チャンダン・リズムパターンのこと)をもとに作られています。一恵さんとは20年来、韓国関係の共通体験があって、あの「乗り」を知っているということで思いついたのでしょう。
いや、そもそも一恵さんとの共演のきっかけが韓国ものだったかもしれません。22年前のユーラシアンエコーズコンサート。それまで栗林秀明さん(17絃)とはよく共演していました。韓国伝統・邦楽・雅楽・洋楽のアンサンブルをやるにあたって、箏・17絃のアンサンブルを軸にしようと思って、栗林さんに相談。一恵さんが参加するようになったきっかけだと思います。そのコンサートの時の一恵さんの歓び様はちょっと普通で無いものがありました。当然の流れのように一緒に韓国へ何回も行ってコンサート、録音を繰り返し、その流れがヨーロッパ即興へとも続きました。最新ではユーラシアンエコーズ第2章、ソウルでの姜垠一ヘーグムプラスコンサートへの参加になります。
もともとシャーマニックな感覚のある一恵さんが韓国のシャーマニズムに惹かれていくのは大変自然です。しかし、日本の音楽と韓国の音楽が全く違うということもしっかり把握しています。「玄界灘は深いのよ」というインタビューでの言葉に表れています。
そんな一恵さんが惚れ込んでいる曲がこの「かむなぎ」です。
私は、それはそれは大変です。なんせ9種類の打楽器を一台のコントラバスで表現するのですから。ハイ。基音となるティンパニは「C」(ド)にチューニング、それはE線をCまで低くします。響きの良いところだとドスの利いた音になりますが、派手な音ではありません。A線をGに下げ、D線とG線にはB-thickをG・Cの音がでるところに挟み込みます。A線の駒近くにはアルミ製の洗濯ばさみを咬ませます。最近A線もプレーンガットにしたため、以前の洗濯ばさみでは役に立たず、あらたに2種類を購入して試しています。B-thickのフィンガーボード上の安定のために特製B-thickに改良、滑り止めも挿入するなどが今回の工夫です。
手は何をするかというと、両手でのピッチカートを基本にします。そのために左手の親指にある程度のタコを作っておかないと良い音が出ません。この曲を演奏する予定の1ヶ月前からタコ作りに励むことになります。アルコとピッチカートの併用、アルコの背で叩くために、カーボンファイバーのアルコをメインにします。スティックも、ギロ状のもの(子供用のバドミントンオモチャの柄の部分)、も用意。
第一部ではベースの横置き、高次倍音、ささら、テールピース演奏などイレギュラー奏法のオンパレードです。が、とっても、自然にやっています。西村朗さんもCD録音を気に入ってくれているということです。(CD録音時は何カ所か即興的に変えてしまったところもありますが、それも受け入れてくれているということはとても安心です~)
この奏法にいたるまで、長年かかりました。フーーーっ。こんなの他のベーシストはだれもやりたがらないよね・・・・