大学での講義

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先日、早稲田大学で講義をしました。伊野連さんという博覧強記の知人のオファーで昨年からやっています。大学での講義は、若く亡くなってしまった大里俊晴さんに呼ばれて横浜国立大学でやったのがはじめて。その後10年以上上智大学で非常勤をしました。もともと私の言うことは、なかなか日本のアカデミズムには馴染まないようですし、話は下手な上に、飛躍が多い。音楽専門ではない普通の学生対象が多くて「共通」語が見いだせない気がして滅入ったりもしましたが、呼ばれる時は、若い人に役立てばと結構一生懸命話します。

伊野さんのコースは「現代美学の射程」と言う講義。「廃墟」から「鶴田浩二」、「アマデウス」などさまざまなとっつきやすいトピックで現代美学を語っている人気講座。この日も200名近い若者が集まっていました。「ドイツ近代哲学における藝術の形而上学」ーーカント、シェリング、ヤスパースと「哲学のオルガノン」の問題ーーリベルタス学術叢書2という著書があります。いただきましたが、私の手に負えるものではありませんでした。また、生命倫理の学会にも所属しているとのこと。

伊野さんは昭和の香りのする居酒屋を愛し、多くの名店を知っています。いつか幡ヶ谷「塩」でご一緒したら案の定喜んで頂けましたね。しかし、あんなに本を読んでいて、音楽を聴いていて、あっちこっちに出歩いて、よく呑んでいる時間が有るな〜と感心します。

彼のそんな人間的魅力を慕って学生が好意的に教室に集まってくるので楽と言えば楽です。助かります〜。

今回初めてコンピューターを使ってやってみました。昨年ある助成金のプレゼンテーションで、私以外のすべての人がPowerPointを使って鮮やかにプレゼンをしていました。これはわかりやすいだろうな、と思ってパソコン付属のソフトを初めて立ち上げて講義材料を揃えました。音源も映像もなんでも入ります。本の部分を読むにしても、そのコピーを映写しながらやるとわかりやすさも増しますね。

しかし、講義前にパソコンと教室の設備の連結がなかなかうまく行かずに冷や汗でした。最悪の状況を予想して、その他の普通のDVD(私のLIVE、映画、ドキュメント)やCD(私のCD,民族音楽、様々な音源)も持ってきたし、なにより楽器も持ち込んでいるのでダメでもなんくるないさ〜。

簡単に言えば、音に関して意識的になろう、音という切り口からさまざまなところに行ける、音ってなんだろう、音から豊かな生活を、ということを我が40年の体験を通して、時には演奏をしながら語りました。かなり専門的なことも言います。専門的であればあるほど「普遍的」になりうるということもままあるのです。

そうだ、この調子で「即興」に関しての文章をまとめようか、とも思いました。レ・カン・ニンもミッシェル・ドネダも即興に関する本を出したそうです。送ってくるのを待っているところ。

音を出したり、話したり、することは、自分が何を考えているのか、自分は何者かを知るチャンス。

書くことは、自分の手で書いたものを自分が見ること。
しゃべることは、口から出てくるコトバを自分が聞くこと。
音を出すことは、楽器を通して出てくる音を自分が聴くこと。(即興ならなおさら)

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