年長さん(歳寄り)は、本当は、たいして思慮深いわけでは無いけれど、微妙に世の中のことが見えていることが時々あります。
たとえば、若い共演者になぞかけのように多くの素材を渡します。その中で何を選択し、どう工夫したかを聞くといろいろ見えてきます。どれだけ考えたか(時間を使ったか)なのかも知れません。意識が良く見える。
じゅんこさんとのデュオの選曲にしても、その例によって多数提案してみました。なにしろ、むがさり唄~うたをさがしてCD~オペリータ「うたをさがして」~スペイン語の歌~ブラジルの歌 と共演してきましたので数に困ることはありません。じゅんこさんの選択・工夫は面白かった。
7月の初演に向けて目下、猛烈稽古中のブラジルもので選んできたのが、「カンサウン・ド・アモール・ヂマイス」、「オーリャ・マリア」、「ベアトリス」でした。嬉しいぢゃありませんか。「カンサウン・・」はジョアン・カエターノ劇場のエリゼッチ・カルドーゾがつとに有名。この録音は星の数ほどあるブラジルポピュラー音楽の録音の中でもトップの1つであることは異論を待ちません。歌うことがこんなにスバラシイ、歌いたい、歌って分かち合いたいと言う気持ちがこんなに溢れた録音はありますまい。それもジャコー・ド・バンドリングループ、ジンボトリオという最高の伴奏と一緒にいながら、無伴奏で歌った録音!今年1月のオペリータでの苦難を越えたじゅんこさんであればさらに納~得です。
「オーリャ・マリア」は我が2大アイドル、トム・ジョビンとシコ・ブアルキ作だし、「ベアトリス」はエドゥ・ロボとシコ・ブアルキ共作。エドゥのムズカシイ音程のメロディを歌うのは本当にムズカシイです。エドゥにはこういう曲が何曲か有り、その中でも1番ムズカシイものです。しかし、この複雑なメロディでしか表すことが出来ない音楽であることは直ぐに分かります。そして実際に聴いてみると単純な曲に聞こえます。この3曲!
むがさり唄からは「最上川舟唄」。故郷の新民謡、なんといっても東北コトバの響きがホンモノ。私がどうやって演奏するか、いつも悩みます。
うたをさがしてトリオからは「ああセリム」「今日は私の日」「クセニティス」「河の始まり」
オペリータから「夕影させば」「旅人の歌」「私の道しるべ」、何度もやった曲ですが、じゅんこさんの提案による新しい工夫が随所にあります。千恵さんのコトバもより伝わってきます。続けることがどんなに大事なことか・・・
スペイン語の歌からはロルカのスペイン民謡集から3曲、タンゴ「花咲くオレンジの木」他
フランス語の「ユーカリタンゴ」その他の可能性もまだ残っています。
達者なピアノの伴奏で、客席で聴いていたい、と思いますが、今回そうもいかないので、ベースを弾きます。今回、A線はプレーンガットから銅巻きガットに替えます。このあたりのことは微妙ですが、ベーシストにとっては大事なトピックになるはずです。
徹の部屋vol.30 「Two is more than company」
前回、徹の部屋vol.29は豪華絢爛・歌舞音曲、史上最多の6名の共演でした。うって変わって、今回は2人です。
いままでのさまざまなユニットでのレパートリーを見つめたり、新たなことにも挑戦して、
DUOであってDUO以上は可能か?無くてはならないDUOとして捉えたらどうなるだろうか?という動機です。
うたをさがしてトリオのもう1人、喜多直毅さんとのDUOは進行中ですが、じゅんこさんとは初めてです。
西洋のことわざで言う”Two is company, four is a party, three is a crowd. One is a wanderer.
(1人はさすらい、2人は仲間、3人は群衆、4人はパーティ)に倣って、
更にその上をねらっちゃいます。 ———–齋藤徹
■日時:2014年6月28日(土)19:00 open / 19:30 start
■出演:さとうじゅんこ(歌)、齋藤徹(コントラバス)
■料金:予約2,500円/当日3,000円(ワンドリンク付)
■予約:03-3227-1405(ポレポレタイムス社)Email : event@polepoletimes.jp
☆さとうじゅんこ(歌)
秋田市生まれ。東京藝術大学音楽学部声楽科ソプラノ専攻修了。歌い手/作曲家。フランスアクスマティック音楽の作曲と演奏に触れ独自の音響芸術の実践に取り組む一方で、ジャワガムランのプシンデン(女声歌手)として演奏活動を行う。グローバリズムの抱える問題とも向き合いながら創造力豊かなアートネットワークの構築を目指す。種子田郷と共にproject suaraを主宰。
☆齋藤徹(コントラバス)
舞踊・演劇・美術・映像・詩・書・邦楽・雅楽・能楽・西洋クラシック音楽・現代音楽・タンゴ・ジャズ・ヨーロッパ即興・韓国の文化・アジアのシャーマニズムなど様々なジャンルと積極的に交流。ヨーロッパ、アジア、南北アメリカで演奏・CD制作。コントラバスの国際フェスティバルにも数多く参加。コントラバス音楽のための作曲・演奏・ワークショップを行う。自主レーベルTravessia主宰。