詩人が言葉を買うぞ、詩人が言葉を買うぞ、と言う曲。
2人のディーバがジャンの元へ行き「クセニティス・どこへ行ってもよそ者」「アルガディニ・遅く、夜とても遅く」「コルフーラ・私の花」とささやきます。するとその3つのテーマに合わせてジャンが踊ります。このシーンにはしびれました。この三つのコトバは映画でも最後のシーンで使われるものです。
この2人のディーバはアラブ音楽(泰子さん)ガムラン音楽(じゅんこさん)と非西洋音楽の代表のような音楽を演奏しています。その一致も偶然ではないような気もします。お揃いのような渋いピンクの衣装で、ザ・ピーナッツのようです。楽屋でジャンさんは「ピンキーシスターズ」と命名していました。けっしてこまどり姉妹ではありません。2人は自慢の美声を競うようでもあり、仲の良い子供のようでもありました。クセニティスのシーンでは、モスラを操る妖精ザ・ピーナッツのようでした。
初参加の美紀さんは17絃のユニークな音色・倍音を活かして演奏しました。私がずっと考えている17絃の姿です。邦楽以外と共演するときに便利な箏・17絃の「手癖」から自由になって欲しかったのです。ピアノでラドミと弾いても何とも情けない短調の和音なのですが、17絃ではラ・ド・ミと弾いても素晴らしい!のです。アンゲロプロスのギリシャ、そのギリシャ由来のリディアン旋法を17絃で演奏すると、それはそれはユニーク。東洋でも西洋でもなく、箏でもハープでもなく・・・しかも低音! この素晴らしき楽器の可能性はまだまだ聞こえてきます。私の極太ガット弦とだいたい同じ太さ・弦長はより長いので、倍音は近似していて、ベースラインを任せても心配無用というか、ベースより良かったりします。この楽器の第一人者、沢井一恵・栗林秀明さんに聴かせたい演奏でした、まだまだ行けます。考案した宮城道雄さんに感謝。
ジャンさん、直毅さんは華やかな女性たちの演奏に対比するように、抑制を効かせ素晴らしいオトコのオトナの演奏・ダンスを披露。しびれました~。後家殺し!
カエターノ・ヴェローゾのアメリカスタンダード集の中で唯一好きなのがサウンド・オブ・ミュージックから「something good」です。somewhere in my youth or childhood, I must have done something good (きっと幼いときや若いときに何か良いことをしていたのでしょう、こんなにいいことがあるのは)若いときのかわりに日本人としては「前世」にしたい気分。この日を迎えることが出来たのは、前世に何か良いことをしたのでしょうね、現世では覚えがありません。このところ私の中に棲み着いているメランコリーさんを忘れることの出来たひとときでした。ありがとうございました。