オペリータ「うたをさがして」メンバー紹介(7)
齋藤徹 さいとうてつ (コントラバス・作曲)http://travessiart.com
舞踊・演劇・美術・映像・書・邦楽・雅楽・能楽・タンゴ・ジャズ・即興音楽・西洋クラシック音楽・アジアシャーマニズム・韓国伝統音楽などさまざまなジャンルと積極的に交流。ヨーロッパとアジア・日本をつなぐ「ユーラシアン・エコーズ」「オンバク・ヒタム」シリーズをプロデュース。日本・韓国・シンガポールで開催。
ヨーロッパ・アジア・アメリカでのフェスティバル、現代音楽祭、などで毎年公演、マスタークラスを行う。世界のコントラバス関連のイヴェントでも活躍、新しい奏法、教育方法、ガット弦の使用などで注目されている。2000年2001年には神奈川フィルハーモニーからの委嘱で作曲および演奏。2006年から自らのレーベルTravessiaを立ち上げCD/DVDを発表、コンサート制作をしている。
乾千恵の「七つのピアソラ」出版記念2008年千恵の輪トリオ(ダンス・バンドネオン・ベースというレアな組み合わせ)。そして今回の「うたをさがして」では長年の懸案だった日本語の歌を作る。昨年から庄﨑隆志さんら聾のダンサー・役者との共演もはじまりました。いつも自らの能力を越えた仕事に四苦八苦しながら、それを楽しんできた感があります。
2013年6月ISB(国際ベーシスト協会)のコンヴェンションに出演、30年間試してきたコントラバスの様々な音楽をベースアンサンブル弦311で披露し好評を得ました。8月には21年ぶりの日韓伝統・現代・音楽・ダンスの大きなコンサートを実施、これもOKでした。
即興、タンゴ、邦楽、ブラジル、ダンス、作曲、ジャズ、フラメンコそして歌作り、ムム、どうも人生「まとめ」に入ったのか、、、それはヤバイかも、としみじみ思う還暦間近の今日この頃です。ともかくこの企画は是非成功したい!
今回の人選で面白いことを発見しました。オリヴィエ、ジャン、徹はほとんど成人するころ音楽・ダンスを自分の生き方として選び、じゅんこ、直毅、裕児さんは幼少のころから音楽や絵をやるために生まれ育ってきました。千恵さんは初めからすべてを越えています。それらが合体するのですから人生面白いです。違いや困難を「楽しむ」ことから何かが生まれる、いずる、わけですな。
チラシ用文章
乾千恵さんとのオペリータ上演 齋藤 徹
乾千恵の画文集「七つのピアソラ」(岩波書店)の出版祝いで作ったトリオ(ジャン・サスポータス、オリヴィエ・マヌーリ、徹)が「千恵の輪トリオ」と命名されたように、千恵さんは人と人を繋げる輪を自然に作ります。今回、千恵の輪トリオに「うたをさがしてトリオ」(さとうじゅんこ、喜多直毅、徹)が合体してオペリータ「うたをさがして」が出来上がり、本日の上演を迎えることができました。
生きることとギリギリの交渉を長い間続けている千恵さんには、妥協はありえません。虚飾無用、思った通りやるだけです。正にイノチガケ。わたしなどは、何か問題にぶつかったら「千恵さんなら、どう考えるだろう?」と思うようにしています。水晶のようにぶれない尺度でありえるのです。
311東日本大震災・原発事故という未曾有な出来事があり、一般の人もそうですが、表現活動をしている者達は特に「おまえはどうするんだ?」と問われました。私はベースアンサンブル弦311というグループを作り国内外で活動しました。南相馬から「自主」避難してきている妊婦・新生児の人達の前でソロ演奏する機会があり、その視線のなかで厳しい教えを受けました。この場に必要なのは「歌」と「踊り」なのだ、同情をしたり、「自己表現」をすることは無意味どころか害にさえなるのだという教えでした。今後の私のすべての活動は、この避難所で成り立つものでなければならないと覚悟しました。
千恵さんとは311のずいぶん前から一緒に歌とオペリータを作ろう、と話していました。少し歌ができたところで311。しばらく経って千恵さんからこの「物語」が送られてきました。311を大きなきっかけとして完成したものでした。私もやるべき時がきたと直感、仕事を進めました。
純度の高い物語をしっかり伝えたい千恵さんと、「今・ここ・私」で起こることを重視する私との間に方法の違いもありますが、もともとの願いは固く一致しています。
千恵の輪は止まるところを知らず、今回も、共演者・聴衆・スタッフみんなを巻き込んでどんどんどんどんと拡がっていくのでしょう。もう千恵の輪曼荼羅です。
この作品が少しでも世のため人のためになることを心より願っております。