本日はシュペイエルの小劇場で録音日。待ち合わせの時間にマーチンさんと会い、鍵を預かってセバスチャンと2人で録音しました。マーチンさんはこのZimmer Theaterの人で俳優です。しかもほんの2週間前に「コントラバス」という戯曲パトリック ズュースキント作(和訳が出ています)をこの劇場で上演したそうです。コントラバス奏者役で一人芝居をするのです。私はリッチモンドのISBで上演を観たことがあります。マーチンさんはこの劇のために中国製の6万円のコントラバスを買ったそうです。コントラバス繋がりもあり、たいへん友好的に劇場を貸してくれ、後半は客席で観ていてくれました。きっと次回の上演で参考にするのでしょう。次回の上演でとんでもない弾き方をしたりして・・・なんて想像するとたのしいです。
セバスチャンとライブを5本やりましたので、今の彼、今の私はお互いよく知るところです。加えて、車での移動中にいろいろな話をしました。それが重要なリハーサルになっているはずです。インプロにおけるミュージシャンの個性と匿名性、演奏に効果を求めることは是か?エゴを押さえようとすることもエゴの一部分、バーチュオシティとプロフェッショナルの関係などなど、問い自体に矛盾をはらんだトピックをお互いの経験に沿って話し合いました。
もちろん答えは得られないわけですので、演奏することによって答えを出すのでは無く、演奏によって問いを具体的にしていく・・・という感じです。ペーター・コバルトのこの楽器には御世話になりました。だんだんと馴染んでいく日々でした。
15テーク録って、セバスチャンの故郷ハイデルベルグに移動。美しい街です。なぜ美しいかというと、米軍が第二次世界大戦後のドイツ内での主要な基地をここに置こうと決めていたので、爆撃が無かったからという皮肉です。大戦中に大戦後のことを事細かく決めていたのは日本統治のケースも同じですね。原爆を2発も落としたのは、大戦後の事を考えてという側面があるでしょう。
とまれ、この街で最後の祝杯をあげ、少し散歩して宿舎に戻りました。明日朝、セバスチャンはケルンに帰り、わたしはもう一泊して汽車でミュンヘンまで戻り、ヒコーキに乗ってニッポンに帰ります。