朝から晩までベース、ベース、ベース、べーす、ベース、BASS、コントラバス。そろそろベースが飽きてきた?なんて言ってはいけねえ、いけねえ。今世ではベースと共に生きていくことになっている?のですから。比べることが間違いの始まり、なんてね。真佐雄、高志、和弘ともに元気いっぱいです。彼らは本当にベースが好きなのですね~。コンサートやレクチャーのない時間は、数多くのベースショップをつぶさに見て歩き、楽器や弓を試奏し、CDや楽譜をチェックし、ベース情報をめいっぱい仕入れてています。19年前アヴィニオンでの私をちょっと思い出します。(「え~そうだったの?」日本での情報とあまりに差がありました。)
翌朝からまたベース漬けが始まりました。
まず選択したのが、Doug Bailletさんのシンポジウムでドラゴネッティと三弦ベースについて。こういうマニアックな題材にこそ大挙して聴講者が集まるのはISBならではでしょう。教室へ移動しているとダグさんが一生懸命練習しています。なにしろ15分前に初めてこの3弦ベースに触れたそうです。もちろんガット弦。ドラゴネッティの様々な面白エピソードをまぶしながらデモ演奏。もちろん上手い。もう5日目となるとISBでは上手いのは当たり前なので、少々麻痺しています。ダグさんは、アンサンブルモデルン(現代音楽の著名なアンサンブル、ザッパやフレッドフリスも取り上げている)のメンバーだったりします。古楽と現代音楽が同居しています。そういう題材のコンサート・レクチャーが多いのも今回のISBの特徴です。
ひきつづきFausto Boremさんのブラジルでのベース教本の話。(Lino Jose Nunes 1838年)以前書いた19年前アヴィニオンで会った彼です。なんでもブラジル初にベースでPHDを取ったとかで、立派な教師でもあるようです。(シコ・ブアルキとカエターノ・ヴェローゾを合わせたような顔なので、妙に親近感が湧いてしまいまっす。)お弟子さん達を連れてきていて彼らにデモンストレーションをさせています。ブラジルで見つかったベース教本はアメリカ大陸ではもちろん最初のもの、全世界的にも二番目のものということ。その中の曲を披露したり、そこから読み取れる当時のベースを想像したり、映画フィッツカラルドの話が出たりという面白い講義でした。彼は今、ミナスジェラエスにいるので、昼食時にはミルトンやトニーニョオルタの話などをして楽しみました。
一休みして午後はMarc Dresserさんのソロから。(↑写真)立ち姿からさえ良いものを感じます。何も隠さず、真摯に楽器に向かう。もちろん彼の専門?分野の多彩なハーモニックスも特殊奏法もあります。献身とか貢献とか言う言葉を素直に感じる人です。実に清々しい。ちょっと惚れちまいましたぜ。こういう自由な発想を持ち、容量の大きな人がカリフォルニア大学サンディエゴ校の教授なのですから(Burtram Turetzky さんから引き継ぐ)志す若者にとって良い環境ですね。全く。
引き続きCatalin Rotaru(ルーマニア)さんコンサート、いやはやこれはなんでしょう?モーツアルトのバイオリンコンチェルトをベースコンチェルトのように軽々と弾きます。ハイ。なんとか挑戦してみました、というレベルではありません。ボッチーニさん同様、座奏です。すなわち、低めの椅子に座り(ピアノ椅子程度の高さ)大きなチェロのように又に挟む形での演奏です。楽器が安定すること、左手の親指を自在に使えることで演奏可能なフレーズが格段と増えるというわけです。ほとんど指板を見ないで演奏します。「ベースらしくないよ、それならチェロやヴィオラを弾けば良いじゃん?」と長年思っていましたが、これはこれでありでしょう。ベースという楽器が今後2つの方向に分かれていくのではないかと思わせる演奏でした。
気持ちを新たにBurtram Turetzkyさんのコンサートへ。「Yestersay Today & Tomorrow」と題されていて80歳になるアメリカベース界のドンは、講義のように聴衆に話しかけながらの親密な感じのコンサートでした。彼はアメリカ中の作曲家にコントラバスの曲を委嘱して演奏しました。その功績は計り知れないと言います。疲れが溜まってきていて英語聴取がだんだんサボタージュを始めているようでもあります。若い頃もっとやっておけばよかった、と思ってももう遅し。
私がバートさんに会ったのが19年前のアヴィニオンのフェスでした。10歳の誕生日を当地で迎える娘と家族で出かけました。フェスの責任者がバールさんでした。日本からは溝入敬三・由美子夫妻、吉澤元治さんと私。クラシックではケルンから河原泰則さんが参加。敬三・由美子夫妻では池辺晋一郎さんの新曲初演もあり池辺さんも参加されていました。フェス終了後、溝入夫妻、吉澤さん・めぐらさん、徹一家、バートさん夫妻が車を連ねて、ヒマワリ咲き誇る地中海岸を移動しサンフィロメン(バール宅)へ行き、休暇を過ごしました。このきっかけから溝入さんはバートさんを訪ねカリフォルニアへ行くことになったのでした。Joelle Leandreさんに会って、日本招聘へ繋がったのもこのフェスです。いろいろな意味で私が世界規模のベースワールドに触れたきっかけでした。それが直接今回のISBへのベースアンサンブル弦311参加に繋がっていると言って良いでしょう。バールさんがすべてのきっかけです。
かつてコントラバスの情報は本当に限られていました。現代音楽のコントラバスというともうほとんど無いに等しい状態。そんな中、銀座山野楽器に小さな小さなコントラバスのコーナーがあり、唯一の情報源として高いLPを買っていました。(情報元はほとんど溝入敬三さんでした)その中にツレッキーさんのLPはいくつかあり、馴染みはありました。その後、リッチモンドでのISBでも再会しています。
夜になり、特別枠を作って最近惜しくも亡くなってしまったStefano Scodanibbioさんの追悼イヴェントがありました。コダックホールを五人のベーシスト( Daniele Roccato, Christine Hook, Francesco Piatoni, Scott Worthington, Mark Dresserさん)が囲むように配列。高次倍音をうまく使ったAlisei( Geografia Amorosa に収録)を演奏。真後ろに配置されていたマークさんに「真ん中で聴くと良いよ」と言われ着席。多くの倍音が円形の大劇場を渦巻き、空間を変容させていくのが目に見えるようでした。このDaieleさんはスコダニビオさんの僚友らしく最近YouTubeに多く投稿しています。アナウンスで「現在、ボッテシーニの曲をみんなが演奏するように、将来はスコダニビオをみんなが競って演奏するようになるでしょう」と言っていました。ボッテシーニもスコダニビオもダイエルさんもボッチーニさんも皆イタリア人です。深く長いイタリアの伝統・歴史!スコダニビオさんを最初に聴いたときは衝撃でした。録音を集め聴き続けていました。世界中のフェスで何回かニアミスをして実際の演奏を体験することはかないませんでした。私と同年です。会いたかったです。
引き続き大劇場でSzymon Marciniakさんのクラシックコンサート、Dave Hollandさんのソロ!二人とも華のある素晴らしい演奏でした。
我がGEN311のメンバー三人はメタボ気味。それに引き替え70歳近いホランドさん、ドレッサーさんをはじめ引き締まった体型を維持しています(ツレッキーさんは昔から例外ですね)。帰り道で反省。それにしても濃い毎日ですわ。頭が飽和し、身体が疲れ、ベルギービールで酔ってくるとまず話し言葉から崩れていき、自分が何を言っているのか分からないのに相手は納得したり・・・・