↑リハーサル
ロチェスター6日目
さて本番の日です。ベーシストシップという言葉は無いのでしょうが、メンバー全員がそういう気持ちになっています。即ち、ミュージシャンシップでもあり、さらにはヒューマンビーイングシップでもあるのです。高志はよく「低いぜ!」と言います。視点が低いということも大事な要素。視点を低くすると、上のことがよく見えます。
9時に借りる楽器を取りに行き、演奏する場所のセッティングをし、準備をするとあと1時間。本番さながらにリハーサル、そして本番でした。いつものように(いつもより)メンバーがオープンな感じです。ハイ、それを望んでいました。
「タンゴ・エクリプス」「かひやぐら~西覚寺~トルコマーチ~invitation」「オンバク・ヒタム桜鯛」「For Zai」4曲演奏しましたが、1曲1曲が終わった時の拍手が大きく、長いこと!そして全演奏が終わるやいなやのスタンディングオベーション。Marc Dresser,Rufas Reid, Robart Black, Diana Gannet, Ken Filano,などなどの名プレーヤーが喜んで拍手をしてくれています。たいへんうれしゅうございました。すぐに多くの人々がメンバーのところに集まり、質問や謝辞を言うために並んでいます。ミッションコンプリです。「ISB2013年のハイライトだ」「夜の大ホールでやらなきゃいけない」「アメイジング!」「譜面があったら直ぐにでもやりたい」「なんてたのしい」「キュート!」
我々の演奏ではお馴染みのビーティックが一番興味を誘ったようで、真佐雄製作のビーティックが飛ぶように売れました。ルーファスもロバートも買っていました。その内、世界中で流行ったりして・・・・なんせ、聴衆が100%ベーシストなのですから。
このビーティック、元はといえば、28年前に娘が生まれた時に使っていたドイツ製のオモチャ。ビス(ねじ)とナットでくるくる回す知育玩具を私が弦の間に挟んだのが始まりでした。当時、箏との共演が始まった頃で、なんとなく箏柱(ことじ)を真似てやり始めて早30年弱ですから、もう弓とかピッチカートと同じように慣れたものなのです。オモチャの時はプラスティックでしたが、木製になり、さらに最近真佐雄モデルが黒檀で作られています。さらに言えば、「for ZAI」でつかうギロ状のものが、そのビス部分なのです。謂わばずっと娘の世話になっているのですな。子は親を育てる。
ちゃっちゃっちゃっちゃっと片付けて、行きつけのベルギービールレストランへ行き乾杯!フーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。
レストランを出て何事も無かったかのように、ベース漬けの時間に戻ります。まずは、JiriSlavikさんのソロ、若手の人気者です。インプロも少しやりますが、得意技は何と言っても右手での人工ハーモニックスです。ほとんどすべてのポジションで人工ハーモニックスを出すことが出来るので、ギターのような演奏が出来ます。そこに足でスネアドラムのブラシの音を出し、さらに歌まで歌ってしまいます。大きな期待を持たれているようです。
続いてうって変わったオトナの狂気の世界。Dean Ferrellさんのオーラル・メッセージ。詩の朗読とベースを一人で弾きます。ダリのような鬚の紳士で、どの会場でもとても目立っていました。私達の演奏を聴いてくれ、是非、聴いて欲しいとということでさっそく参加。
ガット弦(A弦までプレーン)、楽器横置きあり、変則チューニングあり、ですので形状的には私達にとても近しいものがあります。当たり前ですが中身は全く違います。詩に合わせ、変装したり、キャラクターになりきったりしての演技が入ります。本当に詩が好きな人なのです。聞くと、ロスアンジェルス出身、アイスランド在住、オーケストラ団員、古楽の演奏で著名とのこと。オリヴィエ・マヌーリ(バンドネオン)の奥さんがアイスランド出身のピアニストなので話を出すと、「もちろん知っている」とのこと。人工ハーモニックスを駆使したピアニスティックな演奏はなかなかのものです。サティ「ジムノペディ」は普通立てて、ドビュッシー「月の光」は横置きで弾いてしまうのです。先ほどまで弾いていたJIRI君も手伝っていました。
次はホールを変えて、Alberto Bociniの演奏、いや~まいったまいった、あきれて口がふさがらないうまさです。イタリアの音楽文化の深さを痛感。超絶技巧という感じの曲ばかりなのですが、危ういところやミスなどは全くありません。(和弘によるとちょっと間違えて、弾き直していた、ということですが、まったく感じませんでした。)楽々と弾いているので聴く方も愉快になります。悲愴な顔をして譜面に首っ引きで、何とか間違えないように弾くのとは正反対の演奏でした。
夜の演奏会は、ダイアナ・ガーネットさんのクラシックコンサートとチャック・イスラエルさんのジャズ9重奏団。ダイアナさんはフェミニンな雰囲気を会場全体に醸し出す演奏をします。あまり経験したことのない感じです。女性コントラバス奏者のためのパイオニア的な仕事を長年し続けてきたのです。ルーファス・リードさんの曲もありました。ジャズ的な所はなく、クラシックの演奏でした。それもちょっとビックリ。
ビル・エヴァンストリオでお馴染みのチャック・イスラエルさんのジャズは、まさに王道ジャズでした。「いま・ここ」にある訳は見いだせませんが、アメリカ文化としてのジャズは生き続けているのがわかります。多くの観客が大喜びをしていました。
米国で楽器卸をしている知人が合流して、再びベルギービールレストランへ行き、長い1日がおわりました。