神命(シンミョン)その1
韓国録音第一作ですし、その後のほとんど全てが集約されている気がします。処女作は後の仕事の目次になっているという好例です。
何がなんだかわからないままにソウルスタジオに連れて行かれて「ハイ、齋藤さん入って演奏して下さい」「えっ、何、私が、今?ここで?何をやるの?」という状態での録音でした。日本で金石出のホジョク演奏を聴かされてビックリ仰天しました。アルバート・アイラーの演奏に匹敵する、あるいは凌駕するリード楽器の演奏でした。特に高音部の息を呑むような旋律、アイラーを彷彿とさせるビブラート(それは西洋音楽のビブラートの範疇を超えています。)は説得力にあふれていました。
ただの憧れであり、すなわち「ファン」だったのに共演録音すると言う本来無茶な企画です。何しろスタジオにいるのは金石出・安淑善・李光寿さんです。今から思うとゾッとします。もちろん当時は自分がどういう所にいるのか把握できていません。把握していたらもちろん逃げ出していたでしょう。韓国の音楽をやるときの基本中の基本であるチャンダン(長短)さえろくに知らないのですから問題外の更に外です。
ともかくCDができました。この意義はいろいろな意味で大きなものでした。
金石出・安淑善・李光寿さんはそれぞれ巫楽・国楽・農楽のトップの人です。巫楽の金石出さんは巫族(ムーソク)の人で、韓国社会では差別されています。そのため、巫楽・国楽・農楽の演奏家が一緒に演奏することなどあり得ないことだったそうです。しかし、すべての音楽のルーツは巫楽にあり、みんな金石出さん達のやる音楽に敬意と憧れを持っているのです。一緒に演奏しいろいろと習いたいのです。(実際に、一大ブームを巻き起こしたサムルノリ[李光寿さん参加]は全員で結成前に金石出一族の元で合宿をし多くを習ってきたということです。)
訳のわからない変な日本人のベーシストが来ているということでみんなが共演できたという歴史的意味がありました。私でも役に立ったと言うことを後で聞きました。
神命(シンミョン)のCDがほしいです。売ってくださらないでしょうか。
連絡が遅れてスミマセン。
また、CD「神命」は私は預かっておりませんので、ご期待に添うことが出来ません。
(私自身も1枚しか持っておりません)
申し訳ございませんが、他でお探しくださいませ。
齋藤徹