霧島での一泊二日は、東京でワークショップをやっているジャンには申し訳ないですが、大変嬉しい気分転換です。搭乗予定の飛行機は青森から羽田に帰ってくるもので、雪のために1時間遅れで鹿児島到着。奄美へは何回も行きましたが、鹿児島市は初めて。お迎えの邦楽器屋さんの運転で霧島みやまコンセールへ。鹿児島の邦楽事情、奄美の話などをしながら山深き温泉郷へ到着。すでに硫黄の匂いです。
このホール(みやまコンセール)は大変音がすばらしい。それだけで嬉しくなります。経験から言えば、しらかわホール、AOIホール、びわ湖ホールなどクラシック系の有名なホールは音が良いわけで、クラシック系の仕事の時にしか味わうことが出来ません。コントラバスがどうしても西洋クラシックの楽器であることを思わざるを得ません。
とまれ、硫黄の強い温泉に入って翌日午後のコンサートに控えます。一恵さんとのデュオ「かむなぎ」は本来8種のパーカッションのためのパートをコントラバス一台で弾くのでいろいろとあります。私は毎回いろいろな工夫を付け加えてきましたが、最近は安定してきました。最低弦をEからCへ下げます。普通、オーケストラでCの音を出すときは、5弦のコントラバスか、イクステンションの付いた弦長の長い楽器を使います。この曲のオリジナル楽譜のティンパニの指定がCなのです。普通の4弦のコントラバスのE弦をCまで下げてしまうと音がボンヤリしてしまいますが、このホールではドーーンと鳴ります。本物のティンパニのようです。エンドピンを紫檀にしてゴムを外したので音の反応は早くなったせいもあるかも知れません。紫檀エンドピンの晴れがましいデビューでした。
打楽器→コントラバスへの編曲の試行錯誤の末にあみ出した左手の親指を使ったピッチカートは、その指にタコを作っておかないと良い音がでません。右手と左手でピッチカートを複雑な譜面通りに弾くわけです。他の演奏で使えるとはなかなか思えません。これをやるコントラバス奏者は今後現れるのでしょうか?現れたら教えます。亡くなったスコダニビオさんはこの両手ピッチカートの先駆者でした。しかも人工ハーモニックスも付け加えるので、なかなかな難易度です。ケルンのセバスチャングラムさんはスコダニビオさんとデュオもやっているので直接習っていて上手でした。こういう極個人的なテクニックがだんだんと人口に膾炙していくのでしょう。楽弓だって、誰かが初めて使い始めたのでしょうが、今や当たり前です。
そんなこんなでコンサートも終わりました。六段、焰(ほむら)、畝傍山、かむなぎ、などなどのレパートリーを使う沢井一恵の360度の眼差しは各地で波紋を呼ぶでしょう。思えば、一恵さんとの共演も20数年にもなりました。フランス・スイス・韓国・ハワイ・ワシントン・ニューヨーク・ラオス・タイ・シンガポールいろいろ行きましたね。いろいろなことがありました。
写真はタイ・アユタヤ遺跡