ふたりの洋なし型コントラバスを弾く若者
ひとりは先頃紹介したベネズエラのエル・システマ出身のエディクソン・ルイスさん、もう一人は韓国のソン・ミンジュさん。ふたりとも洋なし型コントラバスの名器を弾いています。エディクソンさんは3弦!の楽器でちょっとビックリ。
エディクソンさんは17歳でベルリン・フィルに史上最年少で入団。治安の悪い貧困地区出身。言ってみれば指揮のグスターボ・ドゥダメルと並んでエル・システマのスターでしょう。30万人のエル・システマの頂点。ベルリンフィルのクラウス・シュトールに認められて彼とベースアンサンブルもやっています。最近はチェロのアネル・ビルスマに師事しているといいます。ある意味、最高の環境です。しばしばベネズエラに帰り、演奏、指導をしています。それが自分だ、と答えていました。ネット上にたくさん演奏があります。
一方のミンジュさんは父親がソウルフィルのコントラバス奏者、ドイツグラモフォンからCDがでてミュンヘンに在住のようです。エリート家庭なのでしょう。ドイツグラモフォンと言えば一流の証し。(これは世界発売でなく韓国ローカルブランチらしいですが・・)ジャケットではほとんど韓流スターのような写真がたくさん。
二人とも達者です。私にはとてもあんなに弾けません。しかし何とも対照的な2人。でもやっている音楽はほとんど同じ西洋クラシック音楽。ムムム。基準が西洋クラシック音楽という枠はいろいろと便利なのでしょうが、その弱点を認識しないといろいろな種類のエリートを産むことになるのかもしれません。「うまい」「すごい」の基準が暗黙の内に規定されています。
クウェート出身のNabil Shehataさんは、バレンボイムの推薦で世界的に活躍、最近はクーセビッキーやズビン・メータのようにコントラバスから指揮への転向を考えているようです。パール・アレキサンダーが教えてくれたBozo Paradzikはサラエボ出身。インプロや現代音楽のJohn Eckhardt さんはロック出身。世界にはもっともっと畏るべき若者が、今まで思いも寄らなかった所から出てきているのでしょう。日本にもいるのでしょうね。私達の世代が、カー、ツレッキー、プロト、グリロ、スコダニビオに驚いていた時とは大分様子が違うようです。
私としては、西洋クラシック音楽という枠から自在に飛び抜けた奏者に会いたいと思います。