ベネズエラ

終わることの無い事務作業は、どうしても音楽を聴きながらということになります。昨年12月の忙しい時期はジルベルト・ジルのオーケストラ伴奏新作で乗り切った感じでした。カエターノがコンセプトを替え続けてちょっと消耗気味、シコは相変わらずゴーイングマイウエイで質の高さを維持、ミルトンはちょっとお休みか、と言う中で「歌」の力そのものを感じさせてくれるジルやマリア・ベターニャが元気に見えます。ジルは文化大臣を二期務めお疲れかと思いきや絶好調。2人とも人生の肯定感が良いです。

 

アンサンブル・グルフィーオというベネズエラのグループを3年くらい前に集中して聴きました。なかなか音源も見つからなかったのですが、大阪のマチュピチュという南米(特にボリビア)に強い会社から取り寄せました。きっかけは、グルフィーオがブラジルのアミルトン・ジ・オランダ(バンドリン)と共演したセッションがあまりにも爽快・痛快だったのです。ブラジルには時期ごとに時代を牽引するリズムを象徴するミュージシャンが現れます。ジョアン・ジルベルト、バーデン・パウエル、ジョアン・ボスコだったりしますが、最近ではアミルトン・ジ・オランダに注目していました。

 

アミルトンの斬新なリズムを上回るようなクアトロ(四弦の弦楽器)は驚きと歓びに満ちていて、アンサンブルの全員が腕達者で楽しそう。しかも、アミルトンのようなスター的な感じは皆無で、ともかく楽しんでいる感じが興味深かったです。そういえば、ずいぶん昔、サルサのエディー・パルミエリの乗り乗りの演奏にゲストでヨモ・トロさんがエディーを上回る乗り乗りのクアトロを弾いていたのを思い出しました。私はもともとこの種のリズムカッティングが好きなのでしょうね。また、アルパ(ハープ)のリズムカッティングも強烈です。低音でのカッティングは17絃箏の音を想起させます。最近エドマール・カスタネダというアルパ奏者がアメリカでジャズを演奏して注目されているようです。やっぱりね。

 

ベネズエラは正式にベネズエラ・ボリバル共和国と言うそうで、シモン・ボリバルは南米を統一しようとした歴史上の英雄。その彼にならっているのがチャベス大統領です。豊富な石油資源を楯に北の巨大権力に対抗しています。アンサンブル・グルフィーオもアルゼンチン、ブラジルなど南米の音楽を我が音楽として演奏しています。私がジャン・サスポータスとコロンビアに行ったときも、知り合った人達がブラジル・アルゼンチン、チリ、ペルーの音楽を我が音楽としていたのを思い出します。

 

ベネズエラでは児童福祉として音楽教育を取り入れはじめ、その成果がドンドン出来てきています。その1つがシモン・ボリバルユースオーケストラ。日本公演でもロンドンのプロムスでも大成功を収めた実績があります。

 

おそらくロシアのテレビのようですが、これもおそらく地元で演奏しているYouTubeを見つけ、このごろ盛んに観て楽しんでいます。http://www.youtube.com/watch?v=wvfrmvRfNkU

そしてここにアンサンブル・グルフィーオとよくやっているバイオリンのアレクシス・カルデナスが登場、クアトロ、カホン、ベースのカルテットで「蚊の飛行」を演奏。この曲はブラジルのジャコー・ド・バンドリンの曲で技巧的に難しいですが楽しい曲です。私は喜多直毅さんとやったことが有ります。このグループのクアトロ奏者が壮絶なカッティングをしています。聴き惚れ、観惚れてしまいますね。このカルテットとオケの共演もスリル満点。

 

その後、オーケストラのパーカッション奏者+ピアノ、カホンも加わりピアソラ「天使の死」。ペレス・プラードのマンボ、バーンスタインのマンボで大祝祭空間になります。聴衆も演奏者も楽しそうなこと!!

 

こういう音楽を実現している社会と、テレビのジャリタレに小遣いを吸い上げられている社会とどっちが良い? 明らかです。

 

そういえば、私が以前、座高円寺でやった「オンバクヒタム」コンサートで田中泯さんがかぶっていた帽子は、チャベス大統領から木幡さんがもらってきたばかりのものでした。

 

 

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