日常

ヨーロッパに来て、1ヶ月も経つといろいろなことに気づきます。
例えば、フリーインプロヴィゼーションはこちらでは日常。何ともすばらしい演奏も日常。極東島の好き者(あえて評論家とは言いません)はCDを集めることや、著名来日ミュージシャンのことに汲々としてCDが第一次資料のように扱っています。CDを対象とする世界は、いわゆる商業音楽の世界に存在しています。そこではCD制作とそれに伴うライブ・コンサートが一番大事。商品です。
インプロのミュージシャンでCD録音に熱心な人はあまり見かけません。第1世代でレーベルを持っているエヴァン・パーカーやバリー・ガイなどは別でしょうが、それにしても本人が中心になっているようには思えません。
サヴィーナ・ヤナトゥーは日本ではECMの歌手として取り扱われ、地中海の民族音楽系と捉えられていますが、コヴァルトとの親交も深く、近作はバリー・ガイとのインプロデュオを出しています。更に言えば、ECM盤でサヴィーナの楽団でパーカッションを演奏しているKostas Theodorouさんの本職はベーシスト!サヴィーナとの丁々発止のインプロデュオもYouTubeで見つかります。一昨年ブッパタールで会って以来連絡が続いています。若きアコーディオンとのデュオも楽しい。
3月9日にORTでセッションをしたウルグアイ人のギタリストVladimir Guicheffさんはタンゴも弾けば、即興もやれば、現代音楽の作曲・演奏もしています。(http://soundcloud.com/vladimir-guicheff-bogacz  http://soundcloud.com/pechitos-ecuestres)
こういった日常の動きこそが現在であることは明らかです。かれらをCDで追いかけることはなかなかムズカシイ。振り返ってみると、私自身の立ち位置も世界的に見れば同じです。
インプロリスナーが、スター崇拝主義ではかっこ悪い。「わたしはこんなのも知っています、みんな知らないでしょう?ご紹介しましょうか?」というのは日本の「評論家」の伝統なのでしょうが、今は、植草甚一さんの時代ではありません。いつまでも責任のない消費者に隠れているわけにはいかないでしょう。日常と現実のさまざまな差を指摘し、気付かせてくれる評論を待っています。
今、日本では映画「ピナ」や「夢の教室」が大ヒットとのこと。現地ヴッパタールで暮らしていると不思議な感じです。ピナの劇場が潰され、スーパーマーケットになりつつあるし、ヒットの恩恵は、ジャン宅まで全く来ていません。日本文化財団が手を引いてから日本公演はいまのところ予定無し。
フリーダ・カーロの絵が文化村!を中心に渋谷の街にあふれたり、ゲバラTシャツがはやったりするのと似ているかも知れません。現在、ジャンはパリで行う「1980」のリハーサルで忙しいですが、ジャンによると、1980年のピナカンパニーを知っているメンバーはジャンを含めて5人だけだそうです。
はたしてジャンの5月来日の時に、「ピナ」ブームは集客に現れるのでしょうか?楽しみであります。

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