ただ今、富士吉田の宿舎です。9時間のドライブの疲れを取っています。順調にツアーは進み、明日、大千秋楽@ポレポレです。残席があまりないと聞きました。ダンスがあるので空間の維持が必要です。
明日のために、こんな挨拶文を書きました。
ご挨拶
本日はツアー千秋楽へ、足をお運び頂き、誠にありがとうございました。今までのツアーのことを手短に書きます。
月初めに来日したミッシェル・ドネダ、レ・クアン・ニン(今まで、ル・カン・ニンと書いてきましたが、こちらの方が音が近いようです。失礼しました。)とのツアーは、10月3日、上尾バーバー富士で始まりました。トリオのみの演奏は2回しかないことと、初日であることで、沖縄や愛知からも聴衆が集まってくださいました。考えて見ればこの3人だけで演奏したのはこれが初めてでした。(他の演奏家が入ったセットはいくつもありましたが。)
レ・クアン・ニンさんの「打楽器という概念を大きくはみ出した打楽器」の奏法にはみなさんの目が点に。私も10数年前に初めて見たときは笑ってしまいました。サックスにもなり、ベースにもなるのですから驚きです。三人の共通意識は「倍音」です。そのため3人の内、誰がその音を出しているのかわからないというのがこのトリオの大きな特徴でしょう。
5,6,7日は若手の演奏家を一人ずつゲストに迎えました。それぞれ考えてきた工夫をぶつけていました。が、結局、その場でしかない反応をしあうことが一番良い演奏になる、ということをそれぞれ感じてくれたと思います。日本にこういう演奏家が出てきていることだけでもすばらしいことです。この機会を何かのきっかけにして欲しいと思います。たとえこの場でうまくいかなくても将来に活きてくればそれは大成功なのです。
8日は老練な演奏家、沢井一恵・今井和雄を迎えてオトナのインプロでした。8年前にカナダ・フランスで共演しているので、この8年をふりかえったり、今考えていることをぶつけあいました。ホール・エッグファームの優れた環境も相まって、とてもレベルの高いものになりました。
9日はがらりと変わってダンサー3人がゲスト。それぞれのソロを活かした構成をとり、最後には全員が参加。麻莉子さんの若いのびのびとした動き、祥子さんの世界中を驚かせている動き、竜太郎クンのイノセントな動きが十全に発揮出来ました。ダンスとの共演経験が多いニン、ミッシェルは慣れたものでした。
10日、ライブペインティング、ダンス、俳優というジャンルの違う三人がゲスト、開演前にちょっとした事故があり、ゼロに戻し、開演。ひとりひとりがさらに試される事態になり、それぞれの特徴がよく見えた時間でした。本当に即興という方法は恐ろしいです。その人のすべての日常をあぶり出してしまいます。
12日14日とは小鼓の久田舜一郎さんとの共演。また独自の世界が生まれました。久田さんが打楽器の持つシャーマニックなものを試したいと両日とも最初に「翁三番叟」をニンさんとデュオで演奏。どちらもすばらしい空間を作り上げていました。宮沢賢治の「疾中」も2日とも演奏。デーモン的な呪詛や言葉が風に乗り、流れていきます。とても良い経験でした。沖縄・彦根・大阪からもいらしてくださいました。
15日広島公演は、8時間の長距離移動後の演奏でしたが、みな十分この日のシミュレーションをしてきていて、元気に演奏できました。会場の音響がすばらしく、ニンさんの演奏は驚きの連続。鳴り止まぬ拍手で2回のアンコール。
16日佐賀へ列車移動。スムーズに移動して午後の演奏の準備です。大きな紙2枚を張ってある会場。美術家や音楽ファンも多くつめかけた会場は「一体何が起こるのだろう?」という期待で一杯でした。2枚の全く違う絵を全く違う音にのせてじっくり完成。とても充実感のある時間でした。17日、広島の原爆資料館訪問。
18日同志社 立ち見の人も入れるかどうかという大盛況でした。この企画の記録入場者でしょうということです。フランス人二人のゲストで楽屋はフランス語の洪水。岩下さんも早く会場入り。いつもの入念なストレッチ。大阪内の中国道が1時間渋滞し、余裕を持って出発してラッキーでした。12年前のミッシェル初来日時に近江八幡・酒遊館で絵付けをした徳利を西村さんが持って来てくれました。乾千恵さんも体調不良の中、奇跡的にこの日だけOK。車椅子のかたが他にも2名。第一部 トリオ+岩下徹、第二部 トリオ+ベルトラン・ゴゲ+イサベル・デュトア、第三部全員。ちょっと学園祭のようでした。
19日酒心館。早朝、大徳寺での座禅会に参加、その後、龍安寺へ(私は残務整理)。ニンさんは来年のジョン・ケージ生誕100周年で、「龍安寺」の音楽監督。総合バージョンを演奏する予定だそうです。(ダンサー5人、ミュージシャン5人)日本へ来てからも毎日2~4時間楽譜の勉強をしていました。それだけにこの訪問は意義深かったに違い有りません。磯部和尚のお陰で内部まで行けたと言うこと。その後、「べた」なおみやげを買い、そのまま酒心館へ。軽く打ち合わせ。第二部でラフな構成を提示されましたが、その必要は無いです、と逆提案、そしてそれは見事成功でした。韓国からのゲストダンサー辛玉珠さんがめざましいダンスを見せてくれました。久田さんとニンさんの縦・横のパーカッションデュオはかなりの高みを見せてくれました。
現在、神戸の宿泊先の大部屋で午前零時20分です。打ち上げも済み、みんなでカチャカチャとコンピューターをいじくっています。明日午前に出発して、富士吉田で一泊、そのままポレポレ坐へ入る予定です。
ほとんど全カ所で、予想を嬉しく裏切って、聴衆は満員でした。回を重ねる度に何回も来てくださる方も増えました。そして、本日、大団円・大千秋楽を私のホームグランドであるポレポレ坐で行うことができ大変嬉しいです。明日から抜け殻になってしまうのでは無いかとも思ったりしますが、そんなことありますまい。次へむけてのアイディアで一杯です。音楽の力、自分の役割、社会との関わり、すべての経験を次へとつなげるためのめでたい大千秋楽にしたいと思います。皆の衆、プレパランセ!(用意はいいか?)
齋藤徹
ニンの写真ブログ (http://www.lequanninh.net/blog/) は毎日のように更新中です。