ケンジシンドロームとでも言うのでしょうか、ジャンもナオキもテツも心の中にケンジさんが住み続け、訴えかけている日々が続いています。それほど、ケンジワールドは魅力があり、キケンなのでしょう。
こんなプログラムノートを書きました。
明日は入場無料です。お近くの方は是非どうぞ。
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3月11日以降は、それまでと同じではありません。踊る者、奏でる者、書く者、描く者でなくても、すべての人が同じではありえないのでしょう。調べてみると、賢治さん誕生の2ヶ月前に38メートルの津波を記録した三陸沖大地震があり、死去の半年前にマグニチュード8.1の昭和三陸地震が有りました。
その2回の地震・津波を教訓に「この下に家を建てるな」という石碑がいくつも建てられ、それを守って今回助かった村落がいくつもあり、「知ってはいるけど、私の生きている内は大丈夫だろう」と思った多数が犠牲になってしまいました。
賢治さんが書いたいくつもの物語も「石碑」と言えるかもしれません。「日照りの時は涙を流し、寒さの夏はおろおろ歩き」という風景は地震・津波の被災地や戦災地と同じでしょう。
自然災害、人の愚かな争いによるものだけでなく、今回は、科学者賢治さんの想像をはるかに超える放射性物質による恐怖が付け加わってしまいました。100万年待たなければならないという世界。どうしようもない無力感・虚無感に苛まれます。
しかし、そんな時だからこそ、賢治さんの「人を思い、動物・植物を同じように思う心」命を讃える歌がいっそう響いてきます。すべての命をポジティブに思うことからしか何事も始まりません。
今回、イーハトーブ(岩手)生まれのヴァイオリン奏者・喜多直毅さんが急遽参加してくださいました。賢治さんが使っていたであろう「コトバ」での朗読もお願いしています。私たちがとうの昔に忘れてしまった素直な心を思いだすことができれば、賢治さんのコトバを頼りにして賢治ワールドの入り口に辿り着くことが出来るかも知れません。
今宵のひととき、みなさまとご一緒に体験してみたいという気持ちでいっぱいです。(齋藤徹)
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