あっと言う間の休憩、第二部開始
一部の最後で地面へ横たわった「気」を上へ上へもっと上へと届けたい。まさにピッタリのE♭チューニング。「糸」で伝え合う二組の会話が続き、最後に一瞬合わさる。そのまま西覚寺で揺れ始め、行進、invitationで収める。宮沢賢治の「インドラの網」を思い出しながら。後ろの壁には、窓を開け放ったブッパタールのスタジオが写る。ブッパタール名物世界初のモノレールが行く、目の前には総武線が行く、鏡のような空間だった。
2曲目、「浸水の森」から「テーマ」と「夜」。震災後、プライベートの集まりで「夜」を弾いてから、なぜかこの曲が震災のテーマのようになっている。キッドでもエアジンでもやった。メンバー全員のガット弦がやさしく響く。耳をそばだてて聴く。
3曲目「For Zai~オンバクヒタム桜台」アジアのきびしくもゆるいリズムでの遊びをへて最後の歌。全員の願いが少し照れながら歌われていく。(声楽をやっていた田辺さん、歌の好きなパールの他三人は、歌ったことなど無い、私は55年で初めて人前で歌ったのではないだろうか・・・)アンコール「just accept」(ただ、受け入れる)でひとりひとりが好きにソロを弾くシーンを作ったが、ボソボソ歌った歌の方が、それよりも何倍もひとりひとりが表に出てくる。ここを忘れないようにしたい。すべてここから。
本当にいろいろと試された1日だった。
当日お配りしたプログラムは↓
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ご挨拶
本日はまだまだ不安な状況の中、ご来場ありがとうございました。
思えば、昨年4月のポレポレ坐・徹の部屋では、ジャン・サスポータスが参加した「ミモザの舟に乗って」でした。やはり桜吹雪の頃でした。
本日ジャンはドイツ・ブッパタールからインターネットによる参加になります。以下のようにネットやメールでお伝えいたしました。
<<公演内容変更のお知らせ>>
3月ピナ・バウシュ舞踊団の公演地・香港で来日を準備していたジャン・サスポータスさんは、このたびの大震災のためやむなく帰国しました。「私の心は日本とドイツの間でさまよっています。」と悲痛なメールが届きました。「ベースの森の中で」企画は、長年の念願だったので、とりわけ悶々としている中、Skypeを使って参加するという方法を考えました。インターネットを使ってリアルタイムの映像をポレポレ坐に写すのです。ジャンさんは、7時間の時差などものともせず、時空を越え、ブッパタルと東中野を自在に行き交い、ポレポレ坐の壁に入り込み、世界で一番の微笑みをみんなに届けてくれるでしょう。私たちの心は常に一緒にいます。たまたま場所が違うだけです。いつの日にか本当の平和になって、いや平和を創り、改めてポレポレ坐に生ジャンさんを迎えましょう。(齋藤徹)
3月ピナ・バウシュ舞踊団の公演地・香港で来日を準備していたジャン・サスポータスさんは、このたびの大震災のためやむなく帰国しました。「私の心は日本とドイツの間でさまよっています。」と悲痛なメールが届きました。「ベースの森の中で」企画は、長年の念願だったので、とりわけ悶々としている中、Skypeを使って参加するという方法を考えました。インターネットを使ってリアルタイムの映像をポレポレ坐に写すのです。ジャンさんは、7時間の時差などものともせず、時空を越え、ブッパタルと東中野を自在に行き交い、ポレポレ坐の壁に入り込み、世界で一番の微笑みをみんなに届けてくれるでしょう。私たちの心は常に一緒にいます。たまたま場所が違うだけです。いつの日にか本当の平和になって、いや平和を創り、改めてポレポレ坐に生ジャンさんを迎えましょう。(齋藤徹)
同じく「ミモザの舟にのって」の参加者の乾千恵さんからもエールが届きました。(本日デビューするこのグループ、ベースアンサンブル「弦・gamma/ut」のチラシに使わせていただいた書「弦」は千恵さんの筆です。ありがとう!)
徹の部屋、明日ですね。ポレポレ坐に向けて、エールを送ります。
「弦」の音が、ことばが、そしてブッパタールからのステップの音が、よき力となって響きわたりますように! 乾 千恵
メンバー、スタッフ、関係者、お客様など多くの願いやチカラが重なって本日があることを,こんな時だけに、今さらながらに感じます。精一杯の演奏をしようと思います。どうぞよろしくお願いいたします。メンバープロフィールはチラシをご覧ください。
演奏曲
第一部
ストーンアウトより抜粋
韓国伝統音楽のリズムを使っています。ストーンアウトとは金石出さんの名前の英訳しただけのシャレだったのですが、隠語で「麻薬で飛んでいる」という意味があり、アメリカで演奏した時に、ずいぶんからかわれました。クッコリチャンダンで乗ります。永遠に続く円運動。「ねたみ・ひがみ・そねみ」三姉妹から解放されるための踊り。Koto Vortexの委嘱で作りました。全体は45分かかりますが今日は冒頭の部分を演奏します。鎮魂の銅鑼をイントロに使います。
タンゴ・エクリプス
横濱ジャズプロムナードの特別企画で神奈川フィルと演奏するいう「シンフォニックインジャズ」という企画があり3回参加しました。1年目は私が全コンサートを任され、アンコールを含めて3曲作った中の一曲です。現在スターになったバンドネオンの小松亮太さんと私のダブルコンチェルトのような形式でした。亮太さんのコンサートで後にコントラバスカルテットで試みたものが土台になっています。(山崎・東屋・松永・徹)その後、群馬交響楽団の山崎実さんのアイディアで群響のコントラバスセクション8重奏、札幌の(瀬尾高志率いる)「漢たちの低弦」でも何回も演奏しました。
第1楽章は、ジュンバというリズム。1986年にブエノスアイレスに行き、オズワルド・プグリエーセさんと共演しました。夢のような話です。プグリエーセさんの究極の2ビートがジュンバ。第2楽章は、ミロンガ、ハバネラ。最初のメロディは「水の街のメディア」(渡辺えり子作・李麗仙主演)の時の曲。第3楽章は、5拍子のタンゴ。そんなもの普通ありえないのですが、私の身体になぜかある5拍子で踊ってみたくなりました。。
かひやぐら
長い説明が必要ですが、極簡単に言うと、テクニックを使わない(使えない)状態をめざす奏法です。表現する・上手く弾くという暗黙の前提を疑うわけです。人の手のかからない音が一番良い音ではないか、ということから出来た奏法です。ほっておくといつの間にか表現しようとしてしまう心との戦いでもあります。さらには「表現しないようにしよう」という表現をしてしまう心との戦いとも言えます。楽器を寝かせて演奏します。「かひやぐら」:蜃気楼のことを吉田一穂はこう詠みました。
・・・・休憩・・・・
第二部
糸~西覚寺~トルコ行進~invitation
一時、関西を中心にたくさんソロライブをやった。音楽ファンというよりは、フツーのおっちゃん・おばちゃんが集まるところが中心。お寺だったり、個人宅だったり、集会場だったり。そんな中で、ひっちゃきにインプロをやってもお互い幸せでない、自作をやろう、それにしてもベースソロで曲を弾くのは限界がある、そこであみ出したのがE♭チューニングです。伴奏とメロディを同時に弾きやすく、私の好きなリディアンのメロディが乗りやすいのです。普通のチューニングでなくE♭・G・E♭・Gと言うチューニングにします。ここから開けた世界は大きかった。音楽的にも、考え方もずいぶん変わった。糸は京都造形芸術大学での高田和子主催の「帰ってきた糸」の委嘱の中の一曲。西覚寺は小山利枝子個展の委嘱、トルコ行進二種とinvitationは演劇集団「太虛」のために作ったものです。
浸水の森 テーマ~夜
私の最近の曲から。5月に発売の新CD「浸水の森」は小林裕児さんの絵に付けた曲集で喜多直毅さん・佐藤芳明さんと演奏しました。その中からテーマ曲と夜をベースアンサンブルでの演奏を聴いてみたいと思いました。「夜」には5拍子のダンスの場面があり、コントラバスがいかにダンサブルになりうるかを試したいと思っています
For ZAI~オンバクヒタム桜鯛(桜台)
東南アジアから、琉球を通り、朝鮮半島に行き、さらに日本海側に流れ着く海流・オンバクヒタム(もう一つの黒潮)は私の大きなテーマです。マレーやインドネシアの打楽器的音楽のピッタリ合っているところとだらしなく〈いい加減〉な部分を表しました。
桜鯛編は高田和子さんに捧げました。最後にメンバー各自がコトバを歌うか詠むかする予定です。チャレンジは続きます。
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最後に、今朝(4月16日午前7時)に届いたジャンさんのメッセージを載せます。
親愛なるみなさま
今夜は、お越し頂き本当にありがとうございます。
本日、みなさまと一緒にいることが出来ないこと、バーチャル(仮想)な姿でしか観て頂くしかないことを大変申し訳なく思うとともにとても悲しいです。
しかし、私のすべての心も魂もみなさまと共にいます。今夜ばかりではなく、あの大変悲惨な出来事が日本を襲った時から、毎日、毎晩、共にいます。
ここヨーロッパの人達はみんな、日本の方々が日々経験していることを、大きな関心をもって見つめています。そして、日本の方々がこれほどの困難を、すばらしい勇気と落ち着きを持って対処していることに心動かされ、賞賛しています。
私たちは、このような愛と尊敬のレッスンを受けることができ、本当にありがたいと思っているのです。
また東京で会えるときまで。
ジャンさんより(注:Jean sanと原文に書いてあります。)