「うたをさがして」備忘2/2

イメージ 1
「うたをさがして」備忘2/2
使用させていただいた台詞の元です。
1「河の始まり」エレニの旅より
昨夜 夢で 君と二人で  河の始まりを探した  老人が案内してくれた
のぼるにつれて 河は   細い流れに分かれた  雪をいただく  山頂のあたりで 老人が  青々とした ひそやかな
草原をさし示した 茂る草の葉から  水がしたたって 柔らかな地に注いでいて  ここが 河の始まりと 老人が言った
君が手を伸ばして 葉に触れ 水滴がしたたった  地に降る涙のように
____________________________
2「クセニティス」永遠と一日より
ここが我が家  だが言葉を知らない  革命賛歌を書こうにも  母の言葉がしゃべれない  そこで、彼は近所を歩き回り 畑や漁村で、聞いた言葉を書き留めて 知らない言葉には、金を払った 噂が広まった。”詩人が言葉を買うぞ” その日から、行く先々で,彼の周囲には  貧しい老若男女が集まり彼に言葉を売ろうとした
深淵  かぐわしい  朝露  始源  夜鳴き鶯   天空  波濤   湖  未知なる  馥郁たる 夢見心地の人よ、今宵は何を見た?  驚異に満ちた今宵・・・魔法を育てる今宵・・夢見心地の人よ
クセニティス 何処にいても、よそ者  アルガディニ  とても遅く・・・夜、とても遅く
______________________________
3・7「今日は私の日」「目を閉じて」永遠と一日より
あなたはまだ眠っていた  夢を見ていたの?アレクサンドレ
あなたの手が、私を探すように動き、瞼が震え、あなたはまた眠りに落ちた。
あなたの目から、涙のような汗が一滴、転がり落ちていった。
蕎麦で、赤ちゃんが、むずがった。ドアがきしんだ。私はベランダに出てそっと泣いた。
夜、あなたを見ていた。寝てるの、黙っているの? 考えているあなたが恐い。
沈黙に割り込むのが恐い。だから、私は、身体で、私は傷つきやすいと伝えた。
それが私の唯一の方法だった。私はただの恋する女よ、アレクサンドレ
私は裸で砂浜を歩いた。風が吹いて、沖を船が通った。まだ寝ているあなたの、温かみに包まれて、でも、あなたは、私の夢を見ていない。ああ、アレクサンドレ、私を夢見ていると一瞬でも思えたら、嬉しくて泣き出すわ。
遠く遠く広い海を あなたの島が進む  バルコニーの風に,干し忘れのあなたのシャツ
嘘をついたあなたは、部屋の影に隠れ、夜の声に略奪される  
私は、目を閉じてあなたを見る  耳を閉じて,あなたを聞き、  口を閉じて、訴える。
海辺から、あなたに、何度も、何度も、手紙で、話しかける
いつか、この日のことを、思い出すときがあったら、覚えていてね。
夢中になって、あなたを見ていた目・・・・ 夢中であなたに触れた指・・・震える想い出、私は待っている・・・
なぜって、今日は私の日。   踊りましょう、踊るのが嫌いでも,今日は私の日
明日・・・明日って何だ?  いつか君に聞いた、”明日の時の長さは?”  ”永遠と1日”
________________________________
4「コルフーラ 私の花」永遠と一日より
国を追われた私の小鳥は  見知らぬ土地で悲しかろう  おまえを迎えた土地は喜んでも
私とおまえは離ればなれ・・・・ 誰にわたしのコルフーラを・・・・・
リンゴを送ったら、腐った  マルメロを送ったら、しなびた  白いブドウを送ったら  途中で傷んだ 僕の涙を送ったら・・・・
____________________________
5「ああセリム」永遠と一日より
ああ、セリム、今夜、君がいないのが辛い  ああ、セリム、恐いよ、 ああ、セリム、海はとても広い そこはどんなところだ?  僕たちはどこへ行く?  行く手が,山でも谷でも、警官や兵隊がいても、僕らは前に進んだ 今、目の前は海、限りない海だ・・・ 夜、お母さんが悲しい顔で、戸口で立っていた  クリスマスだった。 山の頂は雪で白く、鐘の音が響いていた  これから行く港のことを、君から聞きたかった。 マルセイユや、ナポリのこと、広い世界のことを。 セリム,話してくれ 広い世界のことを。 ああ、セリム、話して、話してくれ、セリム
_____________________________
6「春は約束を守らない」永遠と一日より
全てが一度に来た。  変な痛みと兆候を無視し  頑固に背を向けていたが  闇が訪れた  沈黙が私を包んだ 沈黙・・・・
冬の終わりまでだと  全てが言う  突然の雲の切れ目を背景に  淡い舟の影が顕れ、夕暮れの水辺を 恋人達が散策しても
春は約束を守らない  冬の終わりまでだと  全てが言う
_______________________________
8「看守さん」エレニの旅より
看守さん 水がありません 石鹸がありません 子どもに手紙を書く紙がありません。
また違う制服ですね 灰色の制服 黒い制服
名前はエレニです 反逆者を匿った罪です 今度は何処の牢獄です?
看守さん  水がありません 石鹸がありません 子どもに手紙を書く紙がありません。
また違う制服ですね ドイツは緑 あなたはドイツ人ですか_
名前はエレニです 反逆者を匿った罪です 今度は何処の牢獄です?
44年12月は 私も皆と 広場で解放を祝いました
今度は何処の牢獄ですか? また違う制服ですね あなたはイギリス人ですか?
銃弾1発はいくらです? 命一つはいくらです? 制服はどれも同じに見えます
看守さん 水がありません 石鹸がありません 子どもに手紙を書く紙がありません。
今度は何処の牢獄です? 名前はエレニです 反逆者を匿った罪です
看守さん 私は難民です いつ どこへ行っても 難民です
三歳の時 河辺で泣いていました
水がありません 石鹸がありません 子どもに手紙を書く紙がありません。
________________________________
9「霧の中の風景」霧の中の風景より
探しに行くと決めたので,手紙を書きます。
お父さんに一度は会いたいといつも二人で言っていました。
ママは心配するでしょう。本当はママのことも好きですが、ママは私たちのことを分かってくれないのです。私たちはお父さんの顔を知りません。アレクサンドロスは夢で、お父さんを見たといいます。とても会いたいです。 時々、学校からの帰り道で、後ろから、お父さんの足音がついてきます。でも、ふりむくと,誰もいない。そんな時は淋しいです。ご迷惑にならないように、お顔を見たら、すぐに帰ります。答えてくださるなら、汽車の音に託してください。タタン・・・タタン・・・タタン・・・タタン・・・”私だよ、お前達を待っているよ”
お父さん、もっと早く発てば良かった。木の葉のように、旅をしています。世界は不思議です。鞄や、凍てついた駅や、わからない言葉と身振り。恐ろしい夜。でも、楽しい旅です。まだまだ続きます。
きみら、変わった子だよ、時間を忘れながら、しかも急いでいる。どこにもいかないのか、行ってしまうのか・・・行く先は知っているの?あんたも変わっているぼくかい?ぼくはカタツムリ。這っているだけ。行く先を知らない。前は分かっている・・と思っていたけど。もうすぐ徴兵だお。それだけは確かだ。お父さん、遠い旅路です。夢の中では近いのに、と弟は言います。手を伸ばせば届くくらいだと。
旅を続けます。飛び去ってゆくーーー町も、人も・・・
すごく疲れたときには、西も東もわからなくなって、お父さんのことさえ忘れそう。そうしたら終わりです。弟は大きくなりました。真面目で、服も一人で着ます。大人みたいなことを言います。私はずっと病気でした。すごい熱でした。だんだん良くなっています。でもドイツはすごく遠い・・・・
ゆうべ、旅を中断しようかと考えました。到着する先のない旅は、とてもむなしい。弟は大人みたいに怒りました。裏切るの、と言われて、恥ずかしかった。
互いに話さないのに、二人で同じことを書いているみたい。同じ世界を、光と・・・闇と・・・お父さんを見てます。
__________________________

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です