ノレ・ノスタルギーヤ

そろそろヤバイかな、という予感が的中し、伏せっていました。好き放題生きているようでもストレスは一人前以上にあるようで・・・・

歩けないなら、ということで、気になっていた本を読んでいて,良いものに当たり。「ノレ・ノスタルギーヤ 歌の記憶、荒野への旅」姜信子・岩波書店、
「追放の高麗人(コリョサラム)『天然の美』と百年の記憶」姜信子:文、アン・ビクトル:写真 石風社。

1937年にスターリンの命令で(信用できない民族として)中央アジアなどに追放された高麗人(韓国・北朝鮮)のドキュメント。『天然の美』が繋ぐ歌と人々を書いてある。高麗人であるアン・ビクトルの写真も素晴らしい。

「天然の美」あるいは「美しき天然」は1902年に佐世保の海軍人・音楽教師が作った日本初のワルツということ。そうか、ニホンジンがワルツに親しんでまだ100年しかたっていない。ゲイシャワルツの手拍子が2拍子なわけだ。

私にとって、この曲はチンドンのレパートリーやジンタを喚起する曲として色が付いてしまっているが、高麗人たちに愛され、日本で生まれた曲ということも知らずに、別の詩をつけて広まった。(ちなみにこの本には、マイブーム『恋のバカンス』もちゃんと登場する。)

彼らの追放先はカザフスタン、ウズベキスタンなど。ほとんど棄民のような状態から土地を耕し生き延びてきた。同じように追放されたユダヤ人との交流などは映画のようだ。チェチェン、クルドなど現代史の焦点が密集するエリアだし、ユダヤ人とクレズマー音楽も共有したのかもしれないと思うと、こういう辺境にこそ、世界の中心があるようだ。

ペレストロイカ以後に生まれ故郷に帰ることが許される。ウラジオストック、ナホトカ、パルチザンスクなど沿海州へ帰る。そう、パルチザンスクこそスーチャンのロシア名。スーチャンは昨年私が衝撃を受けた映画監督ヴィタリー・カネフスキーが育った町、日本人の強制収容所があった町で、彼の父はオーケストラの指揮者だったそうだ。

「ノレ・ノスタルギーヤ」は追放された高麗人からさらに「からゆきさん」や「水俣」に範囲を拡げて、しかし、視点は変わらない。

そうか、この後、姜さんは沖縄へ行き、本橋成一さんが映画化した「ナミー」さんを取材するわけだ。いろいろなことが繋がった2冊でした。

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