徹の部屋vol.6_終了

お陰さまで徹の部屋vol.6 終了いたしました。↑は「猿」の段の模様です。

当日配布したプログラムは↓でした。

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本日はご来場、誠にありがとうございます。

「五禽戯」(ごきんぎ)について

私はヒトであり、女です。気功・太極拳の先生と呼ばれ、主婦でもあります。

でも、それもこれも私という存在のほんの上っ面にすぎません井戸を深く掘り進んでいけば、地下水脈とつながっているように、私もあなたも、いろんな存在とつながっているのです。母の胎内では、誰もが単細胞生物から始まって進化の全過程を経て生まれてくることは、よく知られています。体内にも脳にもその記憶は蓄積されているのですが、日常はほんの表面のわずかな部分だけで生活しているのです。

さて、中国では古来、他の動物等から学ぶ(真似ぶ)という考え方があります。「五禽戯」は、漢の時代、華佗(かだ)さんという人が、動物のエネルギーを取り入れようと編集したものです。本来は、五種類の動物に限らず、亀や蛇に学ぶ古典もあるのです。

自分の中に眠っているいろいろな動物を、呼び醒ましてみませんか。動きを習練すると、普段の自分と思えないような感覚や感情が湧いてきます。

「熊」 「鹿」 「猿」 「虎」 「鶴」 。

今日は、第一部「熊・鹿・猿」休憩をはさんで「虎・鶴」この順番で演じたいと思います。

齋田美子

学生終わりの頃、2冊の本に強く惹かれました。「野口体操・からだに貞く」(野口三千三・柏樹社)と「胎児の世界」(三木成夫・中公新書)です。チラシにも書きましたが三木さんのユニークな世界観に触れ、世の中を違う目で見ることができるようになり、野口さんの甲骨文からひもとく身体の理論にはビックリ・ワクワクの連続でした。

音の世界に入ろうかどうか迷っていた時に、この二人の本物の「思想家」に会えたことは決定的でした。少し長いけれど、文章を引用します。その時も、今日も、明日も、私はこの言葉に支えられています。

「自分の感じている一番大事なものが、他人に通じようが通じまいが、それは二の次のことだ。他人に通じさせようとする一切の妥協、卑劣なおもねり、愚劣なサービス精神は、自らを損なうだけでなく、観客を侮蔑し、愚弄する以外の何ものでもない。自分勝手、ひとり合点、何がなんだかさっぱりわからない。・・・・・・大いに結構。ただ一つの願い!!それは舞台に関係する一人一人のすべてが、ほんとうに自分を大切にしてほしいということだ。ほんとうに自分がやりたいことを、どうしてもこうやりたいのだというやり方を、とことんつきつめて、まるごと全体の人間としてぶっつかってほしいということだ。この生なましいいのちの火花だけが、主体的創造活動を触発する唯一のエネルギーとなるのだ。」(野口三千三、前掲書より)

一人で構想を練っていたときはなかなか考えが進まずに困っていましたが、お二人とリハーサルをはじめるやいなや、あっという間にいろいろと見えてきてました。今までの譜面はあまり使わずに、新しい譜面を喜多さんにどんどん送りつけてしまいました。実際に会うこと、そして、その人のために、そこで演奏するためにという条件がどれほど大事なことかを再確認できたいい経験でした。「この三人」で「ポレポレ坐」で「2010年2月下旬」にやるということが、すべてに優先していたのです。そして演技と音は、我々はお集まりのみなさまとの交流を今か今かと待っている状態です。

伴奏音楽でもなく、描写音楽でもなく、さらには音楽でもなく・・・・などと心がけて演奏いたします。どうぞ最後までお楽しみいただければ幸いです。

齋藤徹

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三木さん・野口さんの2人は偶然、同時期に東京芸大の保健と体育の先生でした。当時の学生は恵まれていましたね~

見せるためのもので無いものを見せる、という矛盾からこの企画は始まりました。「見せる」って何だろう?「聞かせる」って何だろう?という根本的な質問に立ち返らざるを得なかったわけです。

私の日常の演奏活動とは、料金を取ってある時間ある空間に限定するという仕組みに支えられているわけです。

韓国で習った「サルプリ」とは、もともとは「恨」を解くために1人で踊ったものが原型だそうです。能舞台の客席には神様の席があるとか、聞いたことがあります。

願いを、客席ではないところに向ける、ということが今回の大きな課題になりました。客席を無視するということではなく、客席の視線も、意識の中では、我々演者でないところに向かっていて、向かった先で演者と出会うような構造を夢想していました。今の世の中、あまりにもエンターテイメントの悪しき面ばかりが出てきていて、しらずしらずに自分も絡め取られがちです。

こういうことも自由に出来るポレポレ坐に感謝です。

「虚階」にはなっていませんが、何小節か演奏して何小節か無音の所をつくり、そのパターンを繰り返したり、演奏者も「踊って」みたり、3人それぞれの願いを勝手に主張したり、自然に出来そうになる音楽ライブのドラマツルギーに、あえて乗らないとか、工夫してみたわけです。

春一番の次の日は雨、という規則通りに雨がちでしたが、多くの聴衆がご来場くださいました。齋田さんの気功関係の方とか、昔のダンス仲間とかの存在も普段の「徹の部屋」にはない雰囲気を加えてくださいました。

小林裕児、小山利枝子、森妙子、安藤裕、佐藤省、板橋正子さんなどの美術家・美術関係者が多くいらっしゃったことも嬉しいかぎりでした。違う視点で観て・聴いているのがよく分かります。彼らの反応は時に、意外だったりして、いつも刺激的です。

また今回から、EUジャパンフェスタ日本委員会が招待者分の助成してくれることになり、ますますいろいろな方が徹の部屋にいらっしゃることになりました。せまい業界や職種、趣味などを越えて、どんどん拡がれば、と願うばかりです。

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