年の瀬の2つのライブへの文章

ポレポレ坐「徹の部屋」vol.5 コントラバスとコ○ト○バ○の宴

のチラシできました。ご入用なかた、また宣伝お手伝いくださるかた、メールをくださいませ。

裏に書いた文章;

「つばめ」と「空飛ぶ絨毯」

2008年、野村喜和夫さんとメキシコシティでの詩のフェスティバル「POESIA EN VOZ ALTA」(詩を声高らかに)に出演しました。ナポレオン三世が「メキシコ出兵」をし、マクシミリアンをメキシコ皇帝に擁立。その彼が住んでいた所にある大変美しいカサ・デ・ラゴ(湖の家)の野外特設テント、そこがフェスティバルの舞台でした。

世界各国からの詩人がさまざまな趣向で自作の詩を「声高らかに」メキシコの夜空に響かせました。かなり長期間行われています。その中の一夜、満員の聴衆が日本語の詩の朗読とコントラバスの即興演奏にスタンディングで応えてくれました。とても嬉しかった。スタッフ、聴衆ともに詩の朗読を日常の出来事として心から楽しんでいるのです。インテリ風が集まる気取った会ではないのに感心しました。しかも入場無料です。音響リハーサルの時、楽器を寝かせての演奏をしようと、「楽器の下に敷く絨毯みたいなもの、ないかな?」とスタッフに頼むと、怪訝な顔ひとつせずに「空を飛ぶヤツか?そうでないヤツか?」と真顔で聞いてきました。こういうユーモアは実に嬉しいものでした。

メキシコの人たちはガイコツが好きです。死者の日を大事にしています。詩を身近に感じていることと、ガイコツ好きはどこかで繋がっている気がします。GNP(国民総生産)は低いけれど、GNH(国民総幸福度)は世界的に非常に高いこととも繋がっているはずです。詩を愛し、コトバを信じて、生と共に死を思い、人生を信じ、幸せを実感する・・・消費立国ニホンが忘れてきたことばかりですね。

上記のメキシコとナポレオンの戦いの中、ラ・ゴロンドリーナ(つばめ)という曲が生まれ、今なお第2の国歌のように親しまれているそうです。捕虜になってフランスに連れて行かれた作者が、故郷への思いをツバメに託すという品格のある歌詞す。それが日本に入ってくると、全く趣の違う歌詞が付いてしまっています。

クリスマス商戦(何という戦いでしょう)のころ、野村喜和夫さんをゲストに迎え、詩のこと、コトバのこと、自分たちのコトバのことをちょっと立ち止まって考えてみる機会になったらな、と思いました。

詩と音に誘われて、空飛ぶ絨毯がフワリとやってきて、みんなを乗せて、東中野の夜空に!道案内はもちろんツバメ、そんな宴を夢見ています。

野村喜和夫(のむら・きわお)http://www.kiwao.com

戦後世代を代表する詩人のひとりとして現代詩の最先端を走りつづけるとともに、小説・批評・翻訳・比較詩学研究などにも執筆の範囲を広げている。その詩はフランスのPO&SIE誌をはじめ、数カ国語に翻訳紹介されている。15冊の詩集、9冊の評論・エッセイ、その他多くの編著、翻訳、朗読CDを発表。

詩集『特性のない陽のもとに』(思潮社、1993)で第4回歴程新鋭賞、『風の配分』(水声社、1999)で第30回高見順賞、『ニューインスピレーション』(書肆山田、2003)で第21回現代詩花椿賞。

朗読パフォーマンスや異分野アーティストとのコラボレーションにも力を入れ、「現代詩フェスティバル95詩の外出」「現代詩フェスティバル97ダンス/ポエジー」「日欧現代詩フェスティバルin東京」「現代詩フェスティバル2007環太平洋へ」を主導した。またロッテルダム国際詩祭をはじめとする海外の詩祭に招かれての朗読、アイオワ大学国際創作プログラムへの参加など国際的にも活躍している。

12月28日
/// 齋藤徹・今井和雄デュオとplanB ///

初めて出会ったのが北里病院、高柳昌行さんの病室でした。高柳教室を卒業した唯一の(伝説の)生徒・今井和雄というのはどういう人?とかねがね思っていました。当時私は高柳氏とデュオを継続中、高柳オーケストラ企画が持ち上がっていた頃です。しかし、それからしばらく会うこともありませんでした。

ライブハウスでの演奏を頼まれて、共演者を捜していた時、偶然、新宿で会い、共演をお願いしました。初共演はめざましいもので、優れた「共演者」に出会う喜びで「張り合う」ように弾いた記憶があります(横濱エアジン)。その後、Michel Doneda, Le Quan Ninhの誘いで、カナダ・フランスツアーの話があった時、迷わず今井和雄と沢井一恵を推薦し、同行してもらいました。各地で、特にミュージシャンの間で、今井和雄のギターが評判になったのは、ど?うだい!と自慢げで、とても嬉しいことでした。ヨーロッパのインプロシーンには、私より、今井さんの方が、指向が合うのではないかと前々から感じていました。ヨーロッパでの彼の評価はますます上がっています。

誕生日が1ヶ月しか違わないことがわかり、シャレと照れで、合わせて100歳になるまでデュオをやってみようかと、planBで毎月デュオを始め2年半継続しました。「100歳の軌跡」Orbitシリーズというタイトル・完全アコースティック・完全即興・1時間・1ステージということだけ決めました。合わせて100歳を越えた時、止める理由も見あたらず、むしろ変化しつつあることを楽しみたいと「100歳の」という文字を削り続行決定しました。

「マージナル・コンソート」では音響に徹し、「今井トリオ」ではエレキ・ギターでジャズを弾く今井和雄のアコースティック・ギターを堪能する機会でもあり、自作品の演奏、他ジャンルとの場での演奏の多い私には完全即興をする日本での貴重で大事な場になりました。

ヨーロッパのオルタナティブな組織(特にフランスのアソシアシオン)の現場に雰囲気の似ているplanBは本当に貴重な場所でした。カフェやバーを兼ねているわけではなく、真っ直ぐに「なにがやりたいのか?」「死ぬきでこの場に立っているのか?」だけを問うてくる厳しい場所です。このデュオには最適な場所でした。

一口に即興演奏と言ってもいろいろな種類・段階があります。ジャズでよくやる和音や旋法に基づいての「アドリブ」もあるし、何も決めずに始め、演奏過程できっかけを見つけると「音楽」にしていくもの、フリージャズのような叫び、ノイズに限ったもの、音響を楽しむもの、などなど。

このデュオでは、変な言い方ですが、「音楽」にしていくのを出来るだけ避けます。もちろん「音楽」が嫌いなのではありません。安易に「音楽」にしてしまわずに、「まだまだ」と、立ち止まります。「音楽・音」って何なのだろう、「人間」って何なのだろう、という根本の問いを深めたいのです。本当に音楽を好きなのですが、ただ普通より欲深いだけかも知れません。(「音楽」や「歌」になる直前を体感したいということが、私個人としてはあります。音楽を破壊していくというベクトルとは逆です。)

即興演奏にとって共演者を選ぶことは、最も重大なプロセスであり自分への試練です。「共演者の違いを楽しむ」傾向には乗りません。planBでは何回か、ゲストを招いたこともありました。(Michel Doneda, Frederic Blondy, 沢井一恵、岩下徹、小林裕児)即興演奏ではありませんが、Olivier Manouryのバンドネオンを加えたトリオでピアソラを演奏したこともありました。2009年初めにはJacques Demierreの企画(ロラン・バルト「表徴の帝国」を題材にしたプロジェクト)では連日リハーサルで使用し、こういう場所が東京にあることが、彼らに自慢でした。

CD「Orbit 1」は(Michel Donedaとのトリオ)planBでライブ録音し、私の個人レーベルTravessiaの記念すべき第1弾になりました。ミッシェルの初孫が生まれた日で、ストラスブール現代美術館の首席キュレーターが数少ない客席にいたことを思い出します。

代わる代わるの人目を惹くコンセプトで集客するわけでもなく、中年オヤジが2人、1時間、楽器と格闘するという演奏は、変わりばえもなさそうですが、2年半続けていると、驚くほど変化していました。2人にとって、毎日毎日がリハーサルであり、問われ続ける日常であり、聴衆にとっても「今・ここ・私」という問いを共有することになることが実感できます。破局的な現代日本で、重要な作業だと信じます。

planBの方針変更により、しばらく休止していましたが、2009年夏から再開しました。何の問題もなく、あまりにも順調に2年半やってきたので、突然の方針変更にリアリティを感じることができず、何が起こっているのかが正直分かりませんでした。

以前のように毎月というわけにはいきませんが、それはあたかも「音」がここで続けることを要求しているようでした。その命令に喜んで従いたいと思いました。今回2009年をしめくくる音は何を私たちに言うのか、耳を、身体を充分に開いて聴いてみたいと思っています。

(齋藤徹)

<公演情報>
<主催plan-B> 2009年12月28日【月】19:00(開場30分前)
「ORBIT」 斎藤徹・今井和雄
予約2000円 当日2500円
お問い合わせ・ご予約はこちらまでお願い申し上げます。
電 話:03-3384-2051(担当:石原、西原、松尾)
メール:space.plan.b(at)gmail.com

なお、このメールアドレスは強力な迷惑メール除去対策をしております。一度ご送信頂き、数日経っても担当者から返信がない場合は、大変申し訳ないのですが、もう一度メールを再送いただけますようお願い申し上げます。

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