実際にあちこちを動くとほんの三階まで上がるのにも息が切れる。富士山の五合目で演奏すると言うことはこういうことか。ステージ脇には酸素ボンベが備えてある。法令で決まっているらしい。
照明打ち合わせを済ませ、(ピンスポットが1930年製の大型のものだった。何か嬉しい)あっという間に第一回目幕開き。今回上演する「ショート・ピース」という演目は何回もやっているので、安心は安心だが、それではつまらない。ともかく「今・ここ・私」でなければと工夫を凝らす。
この演目をジャンはヨーロッパでは、インプロヴァイザーとやっている。インプロヴァイザーがインプロをしている。しかし、ジャンには「筋」があり、「キャラクター」がある。相手が事前に準備しており、こちらが完全インプロでは、よくない、というのが私の持論だ。ともかく同じ土俵にいたい。それも厳密に。10%きまっていれば、こちらも10%決めていたい。中途半端はよくない。夢見る頃は過ぎた。
場所柄もあり、ラテンの音楽を取り込むべく用意。ピアソラ、古典タンゴ、ラ・ゴロンドリーナ(メキシコの方)、アマポーラ、グラシアス・ア・ラ・ビーダ、暗いはしけ、スペイン市民戦争の歌、などなど・・・・。(高場さん・峰さんとのレパートリーが大いに役に立っている。ありがたいことです。)
あっという間に時間は過ぎた。全くのインプロの場面(ケセラセラ)では二人で声の合唱になったところもあった。これは静岡での橋本真奈さんとのセッションの延長になるわけだ。最後にはブラボーブラボーブラボーでのスタンディングオベーション。関係者で軽く食事をして帰る。高地ゆえにワインもあっという間にまわる。経済的でよろしい?
翌日早朝からのワークショップのため、早く起きて用意。ほとんどがプロのダンサー、主役級の人もいる。音楽家も一人参加という編成で25人。ジャンと私で時間を分けて行った。私は音と身体の関係について、さまざまな視点から話し30分ほどの実践もした。通りが速いので楽だ。(ジャンともう一人が私の英語をスペイン語にしてくれる。実は、通訳が行われている間に、次のことを考えられるのでとても楽だった。)美男美女揃いで、東京ならさしずめ一流モデル事務所のような感じだ。そのうちの何人もが、「あの言葉がよかった」とか「全く同感です」とか一人ずつ話しに来るのでちょっとドギマギしてしまう。
ジャンは私のしたことを大変喜んでくれた。ダンスと音楽の共同ワークショップの可能性も広がっていく。