2曲目:
遠くの祭り→糸→西覚寺→ターキッシュ・マーチ→invitation
連続しての演奏。
E♭ チューニングにします。ノーマルなチューニングはE・A・D・Gですが、E♭・G・E♭・Gにします。まず驚くのは、一番低い音を半音下げると、楽器が喜んだように鳴り始めることです。古楽の研究によると、かつては、今に比べて、基本的な音が半音くらい低かった、という話です。
このチューニングを発見したのは、奈良県室生寺のソロコンサートの出番前でした。いまでもハッキリ覚えています。雨が降っていました。その頃ツアーを作っていた人の指向もあって、ソロでいろいろなところで演奏していました。新しい音楽のファンでも、即興のファンでもなく、コントラバスのファンでもなく、それこそ音楽ファンでもない人たちの前での演奏を重ねていました。ヒジョウに鍛えられた季節でした。車を運転し、演奏、運転、演奏の連日でした。
そういう演奏会では、結局自作品を演奏することがいろいろな意味で一番有効だったので、演劇のために作った曲などを演奏していました。演劇では、コントラバス用に作った曲は無く、他の楽器のために書いたものをコントラバスソロに編曲して演奏。それは、なかなか難しいことですが、新たな発見がいくつかありました。その1つがこのチューニングの発見です。ギリシャのリディアン旋法で作った曲をソロで演奏する方法がなかなか見つからずにいましたが、このチューニングにすると、伴奏とメロディを同時に進行できるのです。この発見は嬉しかった。
長調でも短調でもないリディアンで作った曲が何曲もあるので、それをいろいろと試してみました。最近は、逆にこのチューニングを元に曲を作ることもしています。
「遠くの祭り」は、楽器を横にして弾く、例のあれです。「徹の部屋vol.0」でこの奏法でやったときに、ある人から、「遠くのお祭りが、海を越えて、かすかに聞こえるような気がしました」という感想をいただいて、なるほど、と感心して今回からこのタイトルを使わせていただきます。三台でやるのがとても楽しみです。所謂「演奏」をしないようにします?
「糸」は、高田和子さんの京都造形大でのコンサートシリーズ「帰ってきた糸」の時に作ったものです。「糸」というグループ(高田和子・西陽子・石川高・田中悠美子・神田佳子)の再結成企画でしたが、高田さんの死によって、それが最後になってしまいました。ほとんど4つの音だけ成り立っています。
「西覚寺」は、昨年11月の小山利枝子さんの大規模な個展の時のために彦根の西覚寺で作りました。決定を遅らせて、いつも未完成という方法をとっていますが、だいぶ形になってきました。
「invitation」はとても古い曲。ガルシア・ロルカ作の戯曲のために作ったものです。初めの案では、沖縄・読谷村の野外でも公演予定でした。男子・小学生のコーラスをイメージして作ったものです。題名はバール・フィリップスがつけてくれました。「ターキッシュ・マーチ」は何時、何のために作ったのか、どうしても思い出せません・・・・・
私の演奏方法・音楽に対する考え方を色濃く反映したE♭チューニングの代表的な演奏になると思います。