タンゴ・エクリプス

コントラバストリオの譜面の整理に追われています。昨日は和羊(内山)の最後の個人レッスン終了(6時間)。譜面にいろいろなバージョンがあって、どれがどれやらという状態でおます。フゥ〜〜。

もともと整理のできない私ですが、パソコン導入によって自分の曲の譜面は一応キープできるようになりました。キープと言っても、つい先日、外付けハードディスクが開かなくなったりしていますが・・・・。それでも、かつては自分のCDを聴き取って、譜面を作ったりしていた時からは格段の進歩。

今回の譜面を見ながらいろいろと思い出すことを徒然に書いてみます。

1 曲目:タンゴ・エクリプス、(横浜文化振興財団委嘱)想い出多き曲です。横濱ジャズプロムナードが多面的に世の中を挑発していた時期に、私もいろいろと関わって、貴重な経験をさせていただいた。和気あいあいとしていても、なれ合いの状態とはほど遠く、プロデュースの梅本さんとの、外見はニコニコしながらの真剣勝負だった。毎年毎年、その時々の「一番」のものを持って行く年が続いた。

パラムというグループでも出演した。今思うと、その編成こそが、今回のオンバク・ヒタムと同じなのだ。飯田雅春・伊藤啓太とのコントラバストリオに、水谷隆子・八木みちよ達の箏アンサンブル。そのほか、ちょっと思い出すだけでも、バール・フィリップス、井野信義とのトリオ、林栄一・小山彰太・黒田京子・前田祐希とのジャズバンド!、ジョエル・レアンドルとのデュオ、小松亮太・黒田京子・飯田雅春とのピアソラ、千野秀一とのデュオ、ローレン・ニュートン、沢井一恵とのトリオなどなど。

この前年のシンフォニック・イン・ジャズを「観に来てよ。」という梅本さんの言葉に何か異なるものを感じつつ、行った。案の定、帰りがけに「来年、やらない?」と言うことだった。私にできるわけがない、と言う想いと、こんな機会は滅多にないのでやっちまおう、という気持ちが争うか、と思いきや、あっという間にOKをしていた。私って何という人間だろう?人生の中でたまにビックリする決断をする。それも即決。この道に入ったのもそのひとつ。

案の定、曲作りで難航した。開田高原と伊那に一週間ずつ疎開して、一人で格闘。曲はともかく、自分を見つめ直す絶好の機会だった。そんなある晩、月蝕があった。エクリプスという名前はそこから取ったので曲の内容とは関係ない。

コントラバスのジュンバ奏法が一楽章のほとんどを占める。プグリエーセ・ピアソラ体験から、発見した奏法だ。ブエノス・アイレスでもこの奏法は、注目された。プグリエーセのジュンバをコントラバスで表現する方法で、プグリエーセの左手を参考にあみ出したものだ。コントラバス・アンサンブルでその効果は最大限に発揮される。札幌の「漢たちの低弦」では、最多10名のコントラバスで演奏。音響の良いところだと驚くほどのジュンバが立ちのぼった。その昔、プグリエーセ最盛期は、演奏地から何キロも離れたところでも、ジュンバのリズムが聞こえたという伝説がある。群馬交響楽団のコントラバスセクションも8名で演奏した。

二楽章の冒頭は曰く付きのメロディだ。渡辺えり子演出、李麗仙、若松武ら出演の「水の街のメディア」の音楽を担当したとき、李さんとかなりやり合った。私にも信念はあり、いつでも辞める覚悟でいたし、実際に稽古中に一回は、クビになった。その時に作ったメロディなのだ。自分なりの張り詰めた願いのようなものが結晶していて、とても気に入っていたが、李さんは採用しなかった。どこかで使いたいと思っていたので、ここで復活。その後はミロンガ、そして、ピアソラがよく使っていた和音進行に乗って、違う調で三つのハバネラのメロディを三人で歌う。最後に、例のメロディに戻って終わる。ここでのコントラバスのハーモニックスは駒近く、指板の無いところで出すかなりの技術がいる。

三楽章は、二楽章ハバネラの和音進行を元に5拍子でタンゴを駆け抜ける。

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