帰ってきたぜい。今井和雄とのデュオ、一年半ぶりのplanB。一時間一本。開場まで、隣のスペースで来場者はゆったりし、開場と共に開演。演奏する方も、ぎりぎりまで準備できる。終わったあとは、隣のスペースで歓談、時には打ち上げとなる。
飲み物・食べ物を出さない。BGMもない。色もない。ともかく「何もない空間」。それが大事。一方、照明はきっちりあててくれる。「さあ、なにをやってくれる?」と空間に強烈に問いかけられる。それにしっかり答えなければならない。
そして、もう一つ大事な点。集客のことをあまり気にしなくて良い。これは大きい。もちろん出来るだけのことはします。「やる価値があると思うから主催でやっている、集客でうんぬんするものではない」という信頼感は何にも代え難いのだ。「内容でお答えするぜ」という覚悟が自然に芽生える。集客のために自主規制をかけ「わかりやすく」する必要は皆無。ごちゃごちゃ言う前に、命がけでこの場に立ってみろ!と言われているわけだ。
フランスで25年間「ミュージック・アクション」フェスティバルをやってきたドミニク・リピコーさんも「音楽はパブリック・サービスだ」と堂々と言い切る。長いスパンで考えるとそこから生まれた音楽・信頼は、至って尊い。本物のチカラになる。
アソシアシオン(アソシエーション)という制度がフランスには、根付いている。フランス革命からの伝統の1つらしい。何人かでグループを作る、規約を作る、その活動に対し、自治体が評価し、それによって助成を受ける。私がミッシェル・ドネダとツアーをするときはフランス各地のアソシエーションを巡る。アソシエーションのメンバーには、音楽・美術・映像などの当事者ももちろんいる。最低1年前から「誰を呼んで、どんな催しをするか」を決める。そのため、すべて手作りのあたたかい雰囲気だが、内容に関してはとても厳しい。真剣勝負になる。
planB の雰囲気は、いつもアソシアシオンを思い起こさせる。どっちもこっちもあっちもそっちも行き詰まってしまったこの日本で、こういう場所は本当に貴重だ。この日の演奏も快調に飛ばすことができた。ありがとう。私としては、日常の鍛錬を怠らずに、ここで演奏できる次のチャンスを持ちたい。