海のリズム

海のリズムのことを思うことがよくある。

先日、実に久しぶりに「フリージャズ」の演奏をした。(坂田明・千野秀一・齋藤徹@in F 大泉学園)坂田さんの持ってきた「貝殻節」は新民謡ヴァージョンとのことだが、提示されたリズムは単純な2ビートだった。

ペンタトニックでこのビートを繰り返すうちに、様々な海のビートとでもいうものが繋がってきた。「暗いはしけ」(ファドの名曲だが実はブラジル産)の少しはねた2ビート、奄美・里国隆さんの三線の六調、グナワ音楽、韓国のペンノレ(舟歌・これは3拍子だが)、ソーラン節、エンヤトット、さらにはブラジルのサンバまですべてを許容していた。日本民謡の伴奏なんてできるかな?と思っていたのが意外に楽しい方向に持って行けた。ペンタトニックと言っても、始める音を代えると雰囲気は一変する。

オールや網を引く時には、腰を入れて体重を載せる必要がある(だろう)。その際は力が入るちょっと前からエネルギーを「溜め」なければならない。音楽で言う前拍(アウフタクト)が必要だ。「んー、どっこいしょ」の「んー」だ。そのあたりが共通しているのか。そしてこの前拍はダンスにも大いに関係する。(ちなみに武道では無いらしい。)

ヒトは海を見たり、火をみたりすると、黙る。遠い記憶を思い出すような目をしてただ黙って見つめている。今・ここ・個人をはなれ、生物の長い歴史の中で何かを思い出しているかのようだ。

生理的食塩水の塩分濃度が海水と同じだったり、人間の体内時計が一日25時間でそれは月と潮の周期の24.8時間と近かったり、女性の周期もそれに沿っていたり、身体の記憶としては海・潮・月が圧倒的だ。音楽もその領域で活動する。

三木成夫さんによると、さらに話はふくらむ。 つわりが酷くなるのは受精後32週目から一週間で、その時期は、生命の歴史上、海から上陸した時期と言えるという。生命の歴史が、人間の胎内の10ヶ月に比例しているという考え方からの試算だ。人間にとどまらず、鶏も4日目に危ない時期を迎える。それは鶏にとっての上陸。

さらにさらに話は進む。人間にとどまらず、延髄を持つ動物には、16秒が基本的にある、という。延髄の放電が8秒あるいは16秒だというのだ。その16秒が潮の満ち引きと同期しているとまで言及している。ヒトの好み

海に行った時、少し沖まで行ってプカリと浮かぶのが好きだった。最初の恐怖心を克服してやってみるとちょうど耳が隠れるくらいで顔だけ浮かぶ。その時に聞こえてくる音は、今思えば、室岡一さんの録音した胎内血流音によく似ていた気がする。今度行ったら確かめたい。

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