不況と私

ヨーロッパの疲弊は相当なもののようだ。社会の辺境のような場所で仕事をしているのでわかる部分がある。以前書いたように、25年続いていたフランスの Muique Actionフェスティバルがキャンセル、十数年私のヨーロッパでの活動の基盤になっていた。即興音楽、現代音楽ばかりでなく、映像、建築、詩などを自然に含むものだった。共同歩調をとっていたカナダのビクトリアビルのフェスもキャンセル。ここは一回参加したのみだったが、その時演奏したバール・フィリップス、ジョエル・レアンドル、ウィリアム・バーカーとのベースカルテットが縁でジャン・サスポータスさんとのつき合いが始まった、感謝すべきものだった。

スイスはEU諸国と違い、経済的には大丈夫だと思っていたが、ジュネーブでの大きなプロジェクトが突然キャンセル。ロラン・バルトの「表徴の帝国」をテキストに、Jacques Demierre (p. スイス)、Isabelle Duthoit (vo, cl. フランス)、Christian Kesten (vo.ドイツ)、Alexandre Simon (video.スイス)と今井和雄と私で、3週間リハーサル、2週間公演というものだった。日本人二人の参加が不可能になった。(ヨーロッパ人のみで実行する。)

ジャックさんとはCD「ORBIT2」の録音の時に出会い、良い関係が始まっていて、一年以上の準備期間でこのプロジェクトは順調に実現に向かっていた。内容を最優先した彼らのやり方には感じ入っていた。イサベルさんは京都に短期滞在していたし、このプロジェクトの事務だけのためにジャックさんも短期来日していた。丁寧なプロセスだった。それだけにまさかの日本人キャンセルだった。個人的には「表徴の帝国」でのトピックをネタにいろいろと確かめたかった。

私が大変苦手としている日本人演奏家と私の演奏が似ている、とかつてヨーロッパの友人に言われビックリしたことがある。一方「舞踏・BUTOH」を見ると何でも「すばらしい」と言ってしまうヨーロッパ人演奏家の感性にも驚いた。そんなことも含めて、ヨーロッパ人と日本人の基本的な認識の差を確かめたかったのだ。

100 年に一度の不況と言う話だが、これを抜けたときにアメリカ主体の世界体制から次の段階に行くのか?日本は抜けることが出来るのか?当たり前の話だが、音楽家も世の中の一員。アメリカのニューディール政策は、雇用促進だけが注目されているが、芸術普及にも政策を多く立ち上げたと聞く。こう言うときだからこそ、役に立ちたいものだ。

なお、ジャックさん達一行は一月に来日。将来の完全実現を目指し今井・私と一緒にリハーサルをし、1月20日六本木スーパーデラックスでライブをする。

スーパー・デラックス

http://www.super-deluxe.com/2009/1/20

開場 …19:30

開演 …20:00

料金 …前売り2500円 / 当日3000円 (1D付)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です