・・・・オブジェの《等級》が低ければ低いほど、オブジェの客観的性質を明らかにするための可能性は増大する。最下等のオブジェを、軽蔑とあざけりの領域から引き上げることは、芸術における純粋詩の行為である・・・・(タデウシュ・カントール)
このことをずっと考えてきている。モケラモケラでおみやげにもらったビッキさん流の皮むきヤナギは美しいし、弦を叩くといい音がする。アイヌモシリのヤナギの白い枝(ビッキさんは半年間皮むきに集中したと聞く)が、イタリア羊の腹を裂き、腸を取り出し、洗い、よじって作ったガット弦に触れてスパークし、アジアの幻視歌を奏でる。また良きかな。
富良野へ急ぐ。毎回「特別な」演奏を続ける旅は、どんなに楽しくても身体がだるくなる日が来る。そんな時は自然の中でちょっと休むことが一番。富良野に早めに着いたので、近くの自然公園へ行く。車道のある部分だけ白い霧が低く立ちこめている不思議な光景を目にする。車を止め原因追及のために歩く。池の上が白く霧が立っている。気温に比べてかなり冷たい水がわき出ているのだろう。幻想的な池。まるで金の斧、銀の斧の女神が出てきそうだ。「おまえが落としたのはライオンヘッドのベースか?虎猫ネックのベースか?」なんて冗談を言って10分ほど休む。元気を回復。
今日のライブは「唯我独尊」という名物カレー店マスターが仕切ってくれた。「傷つく森のみどり」というスペースを借り受けてのライブ。マスターは元気いっぱいの人。普通の人の三倍は働くという。地元の議員も引き受けている。行政と闘いながら、富良野を守ってきている。20年近く野外でのロックコンサートもやってきたという。スタジオでシコシコ練習するより、野外で大音量でやれよ、と若者にハッパをかけている。豪快な人だ。
富良野の自給率は420パーセント、エコロジカルに鱒を釣る方法、ほっぽらかし農法の野菜の食べ方、話しも尽きない。打ち上げ後、駅前の旅館に泊まる。古くて、味わいある雰囲気でまるで寅さんが逗留していそうだ。そういえば、カーリーヘアー時代の瀬尾クンは佐藤蛾次郎さんに似ていると評判だったそうだ。そうすると私が寅次郎さんか。名誉なことだ。そうありたいものです。
翌日、富良野神社を訪ね、山の麓のマスター宅へコーヒーを飲みに行く。ひとしきりしゃべる。樹の大きな枠で太鼓を作ったんだよ、じゃ、今度は弦を張って楽器を作ったらとか、楽しい話が尽きない。庭の野菜を収穫、今日の岩見沢へのお土産にする。本当に豊かな日常です。
岩見沢へ道脇の観光地をめぐりながら車を走らす。ご当地でも大変温かく迎えられ、最終ライブもぶっ飛ばしつつ無事に終了。打ち上げに集まった人たちとの丁々発止の会話は酔いそうな頭を刺激する、が、結局、酔いが勝つ。だらしなく寝て、だらしなく起きて、千歳空港へ。もうトーキョーサバクに帰らねばならない。 OMBAK HITAMツアー無事終了。関係者の皆様、瀬尾クン、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。写真はほとんどモケラカメラのものを使用させていただきました。合わせて御礼申し上げます。
やっと北海道記が終わりました。明日からメキシコに行ってきます。またご報告するつもりです。では。