姜泰煥(sax)高橋悠治(piano)田中泯(舞踏)齋藤徹(bass)
なんともヘビー。二週間ほとんど毎日に及んだ姜泰煥さんのツアー最終日。私は二回目。彼らの存在感は揺るぎない実績と自信に基づいている。なんとか妥協点を探りながら活動を続けてきた私にはまぶしい。
かつてワルシャワで美術のアバカノヴィッチとコラボレーションをした時のことを思い出した。彼女の絶対無理とも思える要求に対して、参加していた元天井桟敷の人が「このワガママは寺山さんを思い出すよ」と言っていた。自分の為のワガママというよりは作品に対するワガママであることは、明らかなのだが、そのとき現場は凍り付く。
昨今、スタッフや出演者に対する暗黙の遠慮のようなものがあり、事がスムーズに運び、あとくされなく終わることがともかく大事という傾向がある。何か問題があったとしても「ま~ま~」と納めてしまう。「明日もあることだし」などという訳の分からない言い訳。私にしても、何とか成功させたい、つつがなく終わらせたい、という気持ちが内容を上回ってしまうことがある。「それじゃ、ダメだよ、何のためにやってるの?今しかないじゃない?」とこういう先輩たちに気づかされる。ありがたい。(ここに書くことは控えるが、劇場に着くなりそう言う事件があった。)
いつごろからのことか、自分より明らかに大きい人と演奏することが少なくなってしまった。金石出さん・プグリエーセさん・高柳昌行さん・富樫雅彦さん・・・・みんな怖くて怖くて、優しくて、言っていることが分からなくて、という久しぶりの感覚を持てるのが、今回の人たちだ。悠治さんとデュオの場面になると、楽しくて止められなくなる。どう反応するのかが想像を超えている。それが楽しい。遊びを止められない子供になる。泯さんの身体からは奇数拍子や大地のリズムが聴こえてくる。私の指向とも近い。姜さんはサックスを倍音楽器としてとらえているところがあり、それも私と同じ。同じ倍音を出したりして遊んでしまう。
自分の日常の仕事をしっかりやって、時々、こういうおっかない人と演奏することが大事、打ち上げで酩酊した帰り道に思った。