常福寺でのライブ
姜泰煥(sax)田中泯(舞踏)さんとのトリオ。
姜さんを迎えに行き相模原へ。姜さんは会うなり「lee geonyong先生がよろしく伝えてくださいと何回も言っていましたよ」。李さんは昨年のアラスカ・クロスサウンドフェスティバルで私に曲を書いてくれました。現代音楽祭の委嘱なので、ゲンダイオンガクなのですが、楽しく演奏できました。ソウル大の教授が姜さんと親しいというのも、何かうらやましいです。東京芸大の音楽教授はおそらく私のことなどは知りませんよね。
お寺のライブは先月もやっているのでなにかフツーというのもちょっと不思議。住職の原さん曰く「お寺はこういう使い方をしてもらいたいのです。」日本中のお寺がこうなったら世の中変わるでしょう。善光寺の発言が世界中に発信したインパクトも最近のことでした。枯山水の石庭をぼんやり見ていると、原さん(「住職」というより個人名で呼んで欲しいと言う人です。)がとなりにやってきて「あの木はシバの木で、樹齢400年は越えるでしょう。ここのお墓は40年前まで土葬でした。そこにずっと立っている木なんですよ。」
かつて大阪平野の全興寺で演奏したときも樹齢1000年の楠のまえで演奏しました。なんとも緊張したことを思い出しました。お寺ーお葬式だけでなく、結婚式も、遊びもお寺だったのでしょう。集まりやすい場所にあるし、なにより地元に根を張っています。広い座敷もあるところが多い。生と死全部をひっくるめて関係しているものがお寺。
姜さんと最後に演奏したのが千葉のライブハウス。その時、一緒に行ったエンジニアの川崎克巳さん(私のCD「TOKIO TANGO」「 COLORING HEAVEN」を録音してくれました)が直後に亡くなりました。その時話したこともあって、今回はいい音で増幅する手段を練りました。どうしても姜さんのサックスと演奏するにはベースの音を少し増幅する必要があります。ギックリ腰後にはきつかったのですが、みんなに手伝ってもらい、重いスピーカーとアンプを運びました。いい音でほんの少しだけ増幅するためには、大きくて重い装置が必要なのです。人生です。
また五井さんが亡くなって一週間。田中泯さんと五井さんは40年来の同志。心に秘めたものがあったでしょう。五井さんの死に至る壮絶なお話を聞きました。誰にも会わずにひとりで死ぬことだったそうです。
常福寺でのライブは、座禅から入ります。多少の指導があり、全員が真っ暗な中で座禅、しばらくして音が入ります。ほんの数分の座禅でも状況は一変しました。
竹林へ入っていく泯さん。大きな竹を揺すると空から葉とともに雨まで呼んでしまいました。「雨が降り始めました」という泯さんのコトバで70分のライブが終了しました。
こういう空間・時間は必要です。