峰さん、高場さんとの二回目の演奏があった。ファドやペルーのワルツ、シコの歌など初めての経験。ファドも元々あまりコントラバスは使われていない。邦楽器や雅楽、韓国やマレーのシャーマン音楽をやったときと同様に、元々コントラバスが使われていない現場に参加することは挑戦であり、発見だ。ポルトガルギターをまねたトレモロを軽々と弾くことはちょっと楽しかった。ちょうどこの日、本物のシープ(ラム)ガットの弦を張っていったので、重く粘着する弦を爪でトレモロすると普段聞かない音が現れたりした。
演奏でもいろいろと勉強になったが、この日の最大の収穫は高場さんのMCだった。
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こういう音楽では歌が絶対の優位にたっているべきものです。伴奏演奏家達がどんどん「上手く」なっていって「音楽的に」どんどん勝手に複雑にしていって歌を「殺して」しまったのです。幸い私は下手なので救われています。
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ついついテクニック的にこじゃれたことをやりがちな私にもグサッ。示唆に富む言葉です。本当に歌が、音楽が好きなのだな~、もっともっとこういう事を伝えて欲しいと思いました。
峰万里恵さんホームページ http://mariemine.web.fc2.com/index.html
7/28 渋谷アップリンクで3回目のライブがあります。この時はタンゴだけの予定。
7/4・5日の演劇公演「月・風・音・影」が迫ってきました。鼓の久田舜一郎さんとご一緒できるのは本当に果報者です。2000円の券を(当日3500円)預かっています。info@tetsu-saitoh.comに連絡下さい。受付でわかるようにしておきます。久田舜一郎さんとは阪神・淡路大震災のチャリティコンサートで初めて会いました。翌日、崩れかかったビルでの初デュオは生涯忘れられません。「ものぐるい」とはこのことか、と思いました。私の爪は割れ、血が飛び散りました。
死の世界を扱っている能の世界にとってはごく当たり前のことかもしれません。あまりの衝撃で、すぐ東京の演劇にお呼びしました。(それが岸田理生の「ダナイード」だったのです。今回の公演は第一回岸田理生アバンギャルドフェスティバルです。)彼の声に小劇場の役者の台詞が吹き飛びました。「能の美学・哲学はさぞや深いのでしょうね」と聞くと「いやいや、私は形式をやっているだけです」と。
その後もフランス・スイスでご一緒したことも忘れられません。多くの外来ミュージシャンと共演をしています(バール・フィリップス、リー・コニッツさえも)が、ご本人曰く「ミッシェル・ドネダだけが一緒にやっていて楽しかった。」だって。
岸田さんの脚本では「メディアマシーン」「ダナイード」「空・ハヌル・ランギット」の音楽を担当した。イ・ユンテクの「火の仮面」の時、彼女はコーディネーターだった。ジョエル・レアンドル初来日の時は理生さんの演劇にジョエルが参加。様々な関係があった。私が韓国にのめり込んだ後、彼女は韓国にのめり込む。ソウルで偶然会ったこともある。私がシンガポールを拠点にアジア展開を画策した後、彼女もやってきて大きな仕事をした。この展開でいくとそのうちきっと面白い仕事を一緒にすることになっただろうに、早く逝ってしまった。思い出しても仕方ない。気持ちの良い演劇空間を創ろうと思う。