ミルトン・ナシメント公演とトラヴェシア
トラヴェシアレーベルの名付け親(こちらの勝手ですが・・・)ミルトン・ナシメント公演に行く。フレッド無事帰国での家族のお疲れさん打ち上げのつもりだったが、彼の存在感にそれどころではなくなった。たしかに声は衰えているし、ギターのコードもあやふやだったりするが、そんなことは問題になりません。一人の人間が歌を作って歌ってきて今ここにいる圧倒的な存在感。充分満足しました。そういえばホロビッツが亡くなる前に日本に来たときいろいろと喧しく騒いでいたな~なんて思い出した。日本には風姿花伝の考え方もあるし。
優秀な少人数バンドを連れて昔の曲なども披露。唯一自分の曲でなかったのが、いつかこのブログでも紹介した「フェリシダージ」(ジョビンとヴィニシウス作 悲しみには終わりがない、幸せには終わりがあるのに・・・・)。ジョビンとミルトンはとても相性が良い。ジョビンの代表曲「あなたを愛してしまう」の一番好きな演奏は、ドイツのテレビ局の映像でみたジョビンとミルトンのデュエットだし、ジョビンの死後、シンフォニーオーケストラでのミルトンの「マチータペレ」は感動的だった。このフェリシダージは齢を重ねたもののみが可能な表現に満ちていた。
最後の2曲の詞抜粋(高場将美訳)。こんな歌を今の彼から聴くことのゾクゾク感。
「人生のダンス」
人生の舞踏会で あるいはバーで パンと交換に たくさんの善人達がこの職業に踏み込んだ。楽器を弾いて歌うという職業・・略・・すべてのアーティストは人々のいるところへ行く。そうだったのだから これからもそうさ 歌いながら自分を壊し でもわたしは生きることに疲れない 歌うことにも
「マリアマリア」
略・・・からだにマリアの刻印を持つものは マリアよ 苦しみと喜びをまぜあわせる でも策がなければいけない 粋にやらなければいけない 夢を持たなくてはいけない いつでも 肌にその刻印をもっているものだ 不思議な狂気を持っているものだ 人生を信じるという狂気を
トラヴェシアレーベルの次作はDVD「春の旅2003」(齋藤真妃作品)になる。ミッシェル・ドネダと私の日本ツアーのドキュメント。山形ドキュメンタリーフェスにエントリー予定。外国用の字幕も付け終わりこれから最終仕上げにはいる。ドネダの来日に間に合うよう作業中だ。真妃(監督?)は前回同様ミルトンの姿が目に入るや終わるまで感涙にむせぶ。
公演後、福岡天神にあるラテン文化センター・ティエンポイベロアメリカーノの人が話しかけてきてくれた。昨年トリオ・ロス・ファンダンゴスと一緒にそこで演奏した。とても活気のある団体だ。仕事含みでミルトン公演を見に来たという。そうです。文化は今、アメリカ合州国ではなくイベロアメリカだ。